農業情報研究所農業バイテクニュース:2011年1月5日

西オーストラリア 有機ナタネがGM汚染 輸出市場失う恐れ 問われるリスク管理戦略

 モンサントの除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)キャノーラ(ナタネ)の栽培禁止が去年1月に解除されたオーストラリア・西オーストラリア州の一有機農場で栽培しているキャノーラのおよそ70%が、このGMキャノーラで汚染されていることが発覚した。

 サウス・オーストラリアとタスマニアではなおGM品種の栽培禁止が続いているが、西オーストラリアでは栽培されるキャノーラの6%までがGMキャノーラとなり、ビクトリア、ニュー・サウス・ウェールズではこの比率は20%になっている。有機農家や非GM農家がなお多数派とはいえ、この汚染発覚で、頼みとするヨーロッパや日本の市場を失うのでははないかという怖れが一気に高まった。

 4800の生産者で作るオーストラリアの主要穀物協同組合のCBHグループは、西オーストラリアがGMキャノーラを許可した今年から、すべての作物のGM汚染の検査を始めねばならなくなった。CBHのマーケッティング担当者によると、今年の非GM作物の90%はヨーロッパに販売された。GM作物を栽培すればカナダとの競争になるが、非GMならばヨーロッパ市場と一部の日本市場ではその心配は無用だ。ナチュラル(有機)キャノーラ農民は国際市場で大いに優位に立ち、GMキャノーラに対する5%の価格プレミアムを得ている。

 汚染発覚で、このような優位が失われる恐れがある。西オーストラリア政府がGMキャノーラを承認した去年の1月、ヨーロッパと日本の輸入業者が輸入契約をキャンセルすると脅かした。2月には、ヨーロッパの輸入業者が西オーストラリア首相に対し、州からのキャノーラ調達を再考すると警告している。

 汚染が見つかった有機農家は、有機生産者としての地位を取り戻せるかどうか確かでないが、法的措置に訴えることも考えているという。全国持続可能農業協会の州会長は、有機農民だけでなく、州全体の農民が彼の行動を支援すると言っている。”憂慮する農民ネットワーク”のジュリー・ニューマンは、GM農民は、隣の農場が汚染されれば訴訟に直面することになるかもしれないと知るべきだ、政府はリスク管理戦略を誤ったと言う。州農相は一回かぎりの事故と信じるが、再発を防ぐ措置を考える、GMキャノーラ禁止に戻る計画はないと言う。

 Europe, Japan GM canola threat,The Australian,12.27
 http://www.theaustralian.com.au/news/nation/europe-japan-gm-canola-threat/story-e6frg6nf-1225976838667
 State government tests confirm GM contamination,ABC,12.27
 http://www.abc.net.au/rural/news/content/201012/s3102095.htm

 アメリカ*に続き、オーストラリアも有効な共存戦略を模索せざるを得なくなった。そうでないと、特に輸出農業はもたない。

 *米農務省 GMと有機・非GMの共存の道を開く必要 GMアルファルファで環境影響最終報告書,10.12.18
  
Open Letter from Secretary Vilsack to Urge GE and non-GE Coexistence,USDA,12.30