熱帯魚飼育の基礎知識 器具編


目次
水槽
濾過器
底砂
照明
ヒーター,サーモスタット
CO2添加装置
温度計
中和剤,水質調整剤
その他

水槽

熱帯魚飼育でまず必要なのが水槽です.
管理が大変にならない程度で水容量の多いものを選びましょう.

材質:
鑑賞魚用の水槽の材質は主にガラスアクリルプラスチックの3種類です. それぞれの特徴を挙げてみるとガラス水槽は安価でキズつきにくいのですが,重くて割れるという特徴があります. アクリル水槽は加工しやすく軽いのですが,高価でキズつきやすいという特徴があります. プラスチック水槽は,安価で非常に加工しやすいのですが,キズつきやすく熱に弱く強度が低いという特徴があります.

サイズ:
水槽には規格サイズがあり,その長辺の長さによって30cm水槽や60cm水槽と呼ばれます. 表1が一般的な水槽サイズとそのおおよその水量および重量です.
各材質による一般的な水槽サイズはガラス水槽で120cm以下,プラスチック水槽で30cm以下となります. アクリル水槽は小型のものから2m以上の大型のものまで様々なサイズのものが作られています.

表1: 水槽サイズとその水量と重量
水槽サイズ(cm)水量(L)重量(kg)
30cm水槽30×19×25 12約15
45cm水槽45×30×30 35約40
60cm水槽60×30×36 60約65
60×45×45 110約120
90cm水槽90×45×60 215約250


価格:
一般的に観賞魚用のメイン水槽として用られるガラス水槽とアクリル水槽では,ガラス水槽の方が安価です. 特に60cmのガラス水槽が最もリーズナブルに入手することができます.ホームセンターなどで濾過器や照明とセットで購入すればさらにお得です.

形状:
ほとんどが直方体ですが,円柱を縦に半分に割ったような形ものなど色々な形状の水槽があります. 人気があるのは直方体で前面の角が局面となり枠がない水槽です. また濾過器などが完全に一体化した小型水槽もあります.

濾過器

水をきれいにする濾過器も飼育には必要です. 無くても飼育できる魚は数種だと思います.
濾過器は水槽の命ですので,高性能で目的にあったものを選びましょう.

種類と特徴:
まず濾過器の種類については,上部式濾過器,底面濾過器,外部式濾過器(パワーフィルタ),外掛け式濾過器,スポンジフィルタ,投げ込み式フィルタなどがあります. 以下その特徴について説明します.

上部式濾過器
    水槽の上部に設置します. 濾過は水をモーターで汲み上げ濾過槽に落として濾過後水槽に戻す方式で行います. 濾過器の外に濾材も準備する必要があります. (ウールマット程度は大抵付属しています)
    利点は比較的安価で高い濾過能力を持ち,メンテナンスが非常に楽であることです. また水を濾過層に落とすため酸素の溶解量が高く,立ち上げ時に濾過が出来上がるのが比較的早いという特徴があります.
    欠点は構造上水槽上部にスペースを必要とするため,水草水槽の場合に照明増設の邪魔になることです.またCO2(二酸化炭素)を添加している場合には,溶解したCO2を濾過時に逃がしてしまうことになります.
    結論として高い光量やCO2添加が必要な水草水槽以外に適した濾過器といえます. また底面式濾過器やスポンジフィルタと組み合わせることで,さらに高い濾過能力を得ることもできます.

底面式濾過器
    底砂を濾過器の上に敷き,その砂自体を濾材として水を循環させることで濾過を行う方式です.
    利点は安価で濾過能力が非常に高いということです. 水の循環はモーターで行う方式とエアーポンプで行う方式の2種類があります. モータを用いた方が底砂を厚く敷くことができるため,より高い濾過能力を得ることができますが,モーターが発生する熱で水温が上昇するので,夏場は注意する必要があります.
    欠点はメンテナンスが大変なことです.一定期間(数ヶ月?)使用すると濾材として使用している砂が目詰まりを起こし濾過能力が低下するため,底砂の清掃をする必要があります. 底砂の清掃は水草が大量に植えてある水槽には非常に辛いことですが,この濾過方式は砂の中を水が循環するため水草の生育には良い影響を与えます. 物理濾過を行う他の濾過器の出水先につなぎ吹き上げ式にすることでメンテナンスまでの期間を延ばす技もあります.
    結論として水草が無いか非常に少ない水槽に適した濾過器といえます.

外部式濾過器(パワーフィルタ)
    水槽の外に設置します. 濾過は水をモーターで吸出してタンク型の密閉された濾過槽を通し,水を水槽に戻す方式です. 濾過器の外に濾材も用意する必要があります.
    利点は濾過能力が高く,水槽の上部を空けられるため照明を多く設置できることです. また密閉式なのでCO2を添加している場合には,水中のCO2を逃がすことがありません.
    欠点は比較的高価で,メンテナンスが面倒ということです. また密閉式なので立ち上げ時に濾過が出来上がるのが比較的遅くなります.
    結論として高い光量やCO2添加が必要な水草水槽に適した濾過器といえます.入水先にプレスポンジフィルタをつけ,物理濾過を行うことでメンテナンスの期間を延ばすことも多いです.

外掛け式濾過器
    水槽の上部外枠に引っ掛け設置します. 濾過は水をモータでくみ上げ濾過層を通した後,水槽に戻す方式(基本的には上部式濾過器のしくみと同じ)です. 濾材を用意する必要がありますが,大抵付属しています.
    利点は安価で設置が簡単であることです.
    欠点は水槽の外枠に引っ掛けるので濾過器の重量を重くすることができないため,濾過槽が小さく濾過能力が比較的低いということです.また標準では活性炭などによる吸着濾過がメインとなので頻繁な濾材の交換(約2週間おき)を行う必要もあります.
    結論として小型水槽か複数濾過器を設置した場合のサブフィルタに適した濾過器といえます. 予備の濾過器としてもいいかもしれません. 標準の濾材の代わりにセラミック濾材などを使うことで生物濾過をメインにした濾過に変更すれば,濾材交換の手間を省くことができます.
スポンジフィルタ
    スポンジフィルタは他の濾過器の入水口に取り付けプレフィルタとして物理濾過を行う方式と水中に設置し,エアーリフト式で水を循環させ単独で濾過を行う方式の2種類があります.
    利点はどちらも非常に安価で簡単に設置できるということです. 欠点は濾過能力が低いということです.またエアーリフト式の場合にはエアーポンプが結構大きな振動音を出すためにうるさい場合もあります.(見ためには悪いですが,エアーポンプを吊るせば音は小さくなります)
    結論として物理濾過のためのプレフィルタか補助的な濾過を行う場合に用いる濾過器になります.
投げ込み式フィルタ
    水槽内に置くタイプのスポンジフィルタです. エアーリフト式で水を循環させ濾過を行います.
    利点は非常に安価なうえに水槽に放り込むだけで簡単に設置できることです. 欠点はやはり濾過能力が低いこととエアーポンプの騒音です. 底砂の中に半分埋めることで濾過能力を若干ながら高めることができます.
    結論として補助的な濾過を行う場合に用いる濾過器になります. エアレーションが必要なときに使えば(少しですが)濾過もできて一石二鳥です.
以上の濾過器の特徴をまとめたのが表2です.

表2:濾過器の特徴
名称濾過能力価格濾材選択保守性騒音CO2添加総評
上部式濾過器 初心者むき
底面式濾過器(ポンプ式) ×
底面式濾過器(エアー式) ××
外部式濾過器(パワーフィルタ)水草水槽むき
外掛け式フィルタ
スポンジフィルタ(エアー式) ××
投げ込み式フィルタ ××


底床

底砂は敷くことで魚を落ち着かせストレスを減らしたりたり,水草を植えることができます. 底砂によっては水質を安定させたり,肥料を含んだものもあります. 底面式濾過器を使う場合は濾材の役割も果たしますのでちゃんと選びましょう.

種類と特徴:
底砂には天然から採取された天然砂,人の手で加工して作られた人工砂,水草育成を考慮した土(ソイル)系の大きく3種類があります.
一般にソイル系は比重も軽いため水草の根はりも良く,水草の育成にむいています. また肥料を含んでいたり,水質を調整する効果も得られるなど水草育成のために作られたものです. 難しい水草でもソイル系を使うことで,驚くほど簡単に育てることができます. ただし底砂の掃除ができず,半年から1年程で根腐れなどを起こすため,底床の交換が必要となります.
底砂の代表的なものとその特徴について説明します.

大磯砂

    以前は大磯海岸で採取されていたためこの名で呼ばれているが,現在は外国や他の地域から採取されている天然砂です. 価格も安く最も普及している砂で,粒の大きさも大目,中目,小目があります. 色は黒っぽく,敷くことで水槽に自然な感じを出すことができる砂だと思います.
    貝殻が混じっているいることが多いため,そのまま使用すると長期的に水質をアルカリ性に傾けることがあります. 塩酸処理すれば水質に影響しないようにすることができます. (バケツで食酢に一晩つけるという技もあります) 水槽を長期的に維持するのに適した砂といえます.
硅砂

    明るい茶色の砂です.水質を若干アルカリ性に傾ける特徴があるので,アフリカンシクリッド等pHが高い水質を好む魚の飼育に適した砂です.
サンゴ砂

    文字通りサンゴを細かくした白色の砂です.水質をアルカリ性に傾ける特徴があり,汽水魚や海水魚に適した砂です.水質をアルカリ性にしたい場合に,濾材に少しサンゴ砂を加えることがあります.
アクアプラントサンド(ニッソー)

    泥を加工して粒状にしたもので,色は茶色です.また肥料が多く含まれており,水質を弱酸性に傾ける特徴があります.トニナ等難しい水草の育成に最適です.
アクアソイル(ADA)

    泥を加工して粒状にしたもので,色は茶褐色です.肥料は含まれていませんが,水質を弱酸性に傾ける特徴があります.水草水槽向きです.


照明

照明は魚や水槽内を綺麗に見せます. また水草水槽の場合には水草の光合成のために不可欠なものです.
蛍光灯の数で1〜4灯式があります. 高光量が必要な水草水槽なら,60cm水槽で20Wを3〜4灯設置します. ただし,無意味に高光量にしても苔の大発生を招くだけなので注意しましょう. インバータ式のものもあり比較的高価ですが,明るく電気代は安くなります.
また蛍光灯にも種類があり,観賞用や水草育成用として特定の色を強調したものが売られています. こだわらない場合は,一般の蛍光灯を使えば安上がりです. 蛍光灯は時間と共に光量が低下していきますので,1年程度で交換する必要があります.

ヒーター,サーモスタット

熱帯魚は暑い地域に住む魚であるため,冬場はヒーターによって適当な水温に調整してやる必要があります. ヒーターだけでは水温は上がりっぱなしになってしまうので,水温によってヒーターのON,OFFを自動で行うサーモスタットも必要になります.
サーモスタットの種類にはバイメタル式IC式があります. IC式のほうが高価ですが水温調整の簡単さと壊れにくさを考えるとIC式を選択したほうが無難です.
また固定温度に設定されたサーモスタットとヒーターが一緒になった一体型もあります. しかし,ヒーターは消耗品であり1年で交換したほうがよいので,長期的に見るとヒーターとサーモスタットが別になっているほうが安くつきます.
表3はヒーターのワット数とそれに適した水槽サイズです.
表1: ヒーターのワット数と水槽サイズ
ワット(W)水槽サイズ
75W30cm水槽以下
100W45cm水槽
150W60cm水槽
200W60cmワイド水槽


寒い地域では1ランク上のものを選んで下さい. またトラブルの場合を考えると低いワットのものを複数入れるのもいいと思います. ヒーターカバーをつければ,魚やエビが焼けどするのを防げます.

二酸化炭素(CO2)添加装置

二酸化炭素(CO2)を添加することで,水草を簡単にかつ綺麗に育てることができます. また水質を弱酸性にする効果もあります.水草水槽には是非欲しい装置です.
次に添加方法ですが,これには色々なものがあり,薬品電気式スプレー式イースト菌発酵式小型高圧ボンベ式業務用ボンベ式があります. 以下各方法の特徴を説明します.

薬品

    水槽の中に薬品が入ったアンプルを入れて使いますが,内容や作用は不明です. 水草の育成に若干の効果はあるみたいですが,効果的にもコスト的にも使用しないほうが無難です.
電気式

    理科の実験でおなじみの電気反応でCO2を発生させる方式です. 発生するCO2の量が少ないため,効果はいまいちです. また触媒の定期的な交換が必要なため,コストも安いとはいえません.
スプレー式

    スプレーに詰まったCO2を,水槽内の拡散筒に吹き込み添加する方式です. 1日数回CO2を吹き込む必要があるために長期添加には向きませんし,効果もいまいちです. 初期導入にかかる費用は非常に安いですが,スプレーがすぐ空になるため維持費用は非常に高くなります.使用しない方が無難です.
イースト菌発酵式

    イースト菌が発酵するときに生じるCO2を添加する方式です. 初期導入費用,維持費用共に安価で,効果も十分あります. 市販されているものもありますが,ペットボトルで自作することもでき,非常に安くつきます. 欠点は常時添加となることと,温度によりCO2添加量が安定しないということです. とりあえずCO2を添加してみたいという人にお勧めです.
小型高圧ボンベ式

    CO2が詰まった小型の高圧ボンベから,CO2を添加する方式です. 自由な時間と量で添加するためには,タイマー,電磁弁,カウンター,スピードコントローラー,レギュレーターが必要になるため初期導入費用は高価です.また2週間程度でボンベが空になるため維持費用もかかります. 効果は高いです.
業務用ボンベ式

    業務用の大型ボンベ(通称ミドボン)から,CO2を添加する方式です. 高圧ボンベ式と同様に,タイマー,電磁弁,カウンター,スピードコントローラー,レギュレーターが必要になるため初期導入費用はかかりますが,1回の充填で1年ほどもつため,維持費用は最も安くつきます. 効果も高いのですが,業務用ボンベを入手する必要があります.(酒屋でレンタルか,酸素屋で購入) 本格的にCO2を添加する人にお勧めです.


温度計

水温を計るためのものです. 普通の温度計はキスゴムで水槽内のガラス面に貼り付け使用します. 電子式のものはサーモを水中に入れ,表示部は水槽外部に貼り付けます. なかには気温も表示できるものもあります. 普通の温度計で十分だと思います.

中和剤,水質調整剤

最も頻繁につかうものは,水道水のカルキ抜きです. 代表的なものでは固形ならハイポ(チオ酸ナトリウム),液体ならテトラのコントラコロラインです. 液体の方が使いやすいのでお勧めです.
他にもpHの上げ下げ等を行う薬品がありますが基本的には使わないほうがいいと思います. pHは特定の濾材を用いることで調整することができるからです.(ピートなら酸性,サンゴ砂ならアルカリ性)

その他

上に挙げた器具以外に,バケツとホース(水換えなどのため),網(魚をすくうため),小型プラ水槽(薬浴等の隔離するため),エアポンプ(エアレーションのため),pHと亜硝酸の測定薬(水質確認のため),メチレンブルー(病気治療のため)は用意しておいたほうが安心です.
アクアリウム用品は数多くありますが一般に高価で,生活用品や園芸用品で安く代用できるものも多いので一度考えてから購入したいものです.


免責:本情報に基づいた行為によって発生した障害や損失について,一切の責任を負いません.全て自己責任で行ってください.