++「fate」(1)++

fate

(1)







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「見つからないんだ、キラがっ…」

「キラは!! 危なっかしくて、わけわかんなくて、すぐ泣いて!! でも優しいっ、いいやつだったんだぞ!!!」

「ばかやろう!! なんでそんなことになる!! どうしてそんなことしなきゃならないんだよ!!」

「キラだって、護りたいもののために闘っただけだ! なのになんで殺されなきゃならない!! それもっ、友達のお前に!!」

「殺されたから殺して、殺したから殺されて…!! それで本当に最後は平和になるのかよ!! えぇ!?」





 ことばなど、返せるはずもなく。
 溢れるなみだを、止めることもできず。
 何の為に斗ったのかを、思い出すことすら出来ず。

 失ったいのちを、取り戻すすべもなく。




 ああ。
 きみの存在の大きさを、いまさら思い知っても。

 きみはもういない。
 おれがこの手で、殺した。
 けしてしまった。





 いとおしさには怒りで、執着と独占欲には殺意でふたをして。



 なんて愚か。
 みえないふりをして。
 わすれたふりをして。







 この手でもぎとってから思い知る。
 キラ。
 …キラ。
 きみがどんなにかけがえのない存在だったのかを。

 きみをどんなに愛していたのかを。





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 ピピッ、と小さくコールが響き、キサカが姿を現す。
「カガリ」
「……………… 今行く」
 呼ばれて、涙でぐしゃぐしゃの顔を拭いてから振り返る。

 伏せられたその顔は、きっと自分に負けず劣らずぐしゃぐしゃなんだろう。
 震える肩。…頭を、ぎゅっと抱き締めた。
「っ………」
 固まる少年。ぽんぽんとあやすように軽く叩いて、身を翻した。


 カガリを吸い込んで、扉は閉まる。


 ………残された少年の涙は、まだ枯れそうにない。


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「なんだ、どうした」
 銃をホルスターに戻しながら、難しい顔でずんずんと廊下を進んでいくキサカに尋ねる。
 アスランの部屋から五部屋ほど隔てた別の部屋の前で、彼はやっと立ち止まり振り返った。
「………キラ・ヤマトを発見した。現在、この部屋に収容している」
「…っ」
 ほんの数分前に絶望を言い渡された少年の名に、カガリの瞳は見開かれた。
「生きてるのか!?」
「…ああ。生きている。間違いなく」
「!!」
 迷わず身を翻す。
「! カガリ、待て…」
 と言ったくらいで止まるくらいなら、今までこの姫君が暴走する筈もなく。
 真っ先に部屋に飛び込むと読んで扉の前に立ったのに、彼女がまさか廊下を戻っていくとは思わなかった。
「………」
 しかも、あのザフト兵の部屋に飛び込むとは、全く予想できなかった。


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「アスラン!!」
 飛びこむなりそう叫び、ぐいっとその両肩を掴んで、目を近づける。
「キラが見つかった! 生きてる!!!」

「………………」

 何をいわれたのか、咄嗟に理解できない。
 呆けた瞳に、ぐいっと肩を揺さぶってやる。
「しっかりしろ!! 生きてるんだ! キラが!!」
「……っ」
 やっと目の焦点が合って、力強く微笑むカガリの顔を認識するアスラン。

 生きている?
 誰が? キラが?

 …………キラが?


 がばっ、と右手でカガリの腕を掴む。
「…っ」
 言葉が、うまく出てこない。
「こっちだ、来い!」
 その手を取るカガリ。
 アスランは傷みなどもうどこかへ飛んでしまったかのようにベッドから飛び降り、彼女に引かれるままに早足で歩き出す。

 キラのいる部屋の扉の横に、難しい顔をしたキサカが立っている。
 そこまでずんずんとアスランを連れてきて、そして彼をそのドアの前へ押してやる。
「逢って来い。最初の十分はお前に譲ってやる」
「…」
 不思議な顔で振り返ってくるアスランに、厳しく頷く。
「お前は、逢わなきゃいけないだろ?」
「………………」
 ほんの少し切なく目を細め、唇を引き結ぶアスラン。

 そうだ。逢わなければいけない。
 真っ先に、彼を殺した自分が。

「覚悟はいいのか」
 改めて扉に向かうと、今度はキサカがやはり厳しく尋ねてくる。
 しっかりと一回頷き、今度こそ扉に手をかける。


 ―――――――ピピッ。

 やたらと軽い音が響いて、あっさりと扉が開く。




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UPの際の海原のツブヤキ…興味のある方は↓反転して下さい(大した事書いてません)
タイトルインデックスでも書きましたが、ほんとに突発的に書き出したものです。
どうなるのかさっぱり見えません。
ハッピーエンドか悲劇のラストになるかもわかりません。
ハッピーエンドにしても切ないハッピー?エンドが限界のような気もしますし…。
…なので更新は遅くなるかもです…。(ただでさえ遅いのに…)