雪の舞う夢を、君に
(1)
生まれながらに褐色の肌。男らしい大きな手。
それが、キラの背中を滑ってゆく。
「…あ…」
吐息混じりの声が零れて、枕代わりになってくれているニコルの膝をきゅっと抱き締めた。
気持ちよさそうな吐息が、規則正しく繰り返されるが。
「……っ! 痛っ!!」
「え? おいおい、これで痛いとか言ってたらこの後キツいぜ?」
「そ…んなこと言ったって…っ、いた、いたっっ!!」
「おいディアッカ、ちょっと加減してやれ」
キラの髪をさらさらと指で梳いていたイザークが、じろりとディアッカを一睨み。
はいはいとばかりに肩を竦めて、改めてその肌に手を添える。
「…それにしても…キラの肌って、綺麗ですよね…」
「え!? ニ、ニコル、突然何… っあ!! い…っ…!!!」
「キラ! 大丈夫ですか!?」
涙目になって縋りつくキラに、思わずニコルも慌ててしまう。これは相当痛かったようだ。
「ディアッカ!」
キッ、と今度は殺気も込められていそうな勢いで睨みつけるイザーク。
「…キラ…お前、いろいろ敏感すぎ」
やれやれと溜息をついて、諦めたディアッカは手付きを変える。
「ごめ…………あ…、…ふ…ぅ………」
ホッとしたように零れる吐息。少しずつ、気持ちよさそうな呼吸に戻ってゆく。
………キラが痛みを訴える声が響いたのを聴き付けたのだろう。
がんっ、とタッチパネルを叩く音が響いて扉が開くと、鬼のような形相のアスランが、そこに立っていた。
ん、と扉を降り返る三人。キラはもうワンテンポ遅れてから、とろんとした目を向ける。
「…ディアッカ…イザーク! ニコル!! お前達、一体何してるんだ!!!」
うつ伏せのキラに馬乗りになっているディアッカと、膝枕というより抱き枕と化しているニコルと、ひたすらキラの髪を撫でている
イザーク。
しかも、キラは裸。
カッと頭に血が昇ったアスランは、まずディアッカに掴みかかる。
「うわっ、おいなんだよ、いいとこだったのに」
「……っ!! キラに…何をした…!?」
「何ってなァ。見てわかんない?」
「! ディアッカ……お前!!!」
わなわなとアスランの拳が震えたところに、ニコルのため息が割り込んだ。
「ディアッカ…わざと煽ってません?」
「いや〜、こいつからかうなら、キラをネタにすんのが一番だからな」
「バカ野郎。あとでとばっちり食うのはキラだぞ!」
「…え? あ、あの、何…? なんでアスラン怒ってるの?」
そして一人状況がわかっていないキラ。
「キラ!! お前もお前だっ、なんでよりによって三人がかりで、………」
続きが言えず、顔を真っ赤にして言葉に詰まってしまったアスランに、ついに耐えきれずにディアッカが吹き出した。
そして、事の真相を語る。
「…………………………ギックリ腰??」
思わず眉間にシワを寄せてしまうアスランと、真っ赤になってしまうキラ。
「…お前…その歳でギックリ腰になったのか?」
「なりかけたの!!!」
力いっぱい訂正するが、アスランにしてみればそう大した違いはない。
「…それでディアッカにマッサージ…」
「ディアッカが指圧の講義受けたことあって、実技で免許取ったって話聞いたから…」
はぁ…、と深い溜息をついてしまうアスラン。
しかも裸だと思ったのは勘違いで、ちゃんとズボンは穿いていた。腰をマッサージできるように、大分下にずらされてはいたが。
「……なら、まあ、ディアッカは分かるとして…。ニコルが膝枕してたのは何なんだ?」
「キラと一緒にいちゃいけませんか?」
きょとん、と純粋に尋ねる一つ年下の少年に、再びぐっと詰まってしまう。
「…、まあ…ここの枕が固いって、キラがぶつぶつ文句言ってたのは、みんな知ってるか…」
「……だってほんとに固いんだもん」
ヴェサリウスの備品の枕が合わなかったため一時期不眠症になりかけてしまい、結局実家から枕を送ってもらったというエピソードは、
この艦に乗る人間なら皆知っているほど有名なキラの逸話の一つ。
「それならイザークは何してたんだ。別段何かをしてる様子もなかったが」
「キラはアサルトシュラウドの搭載作業をしてる時にぎっくり腰になったんだ。オレも付き添って何が悪い」
「だからっ、まだなってないってば!!」
力一杯否定するキラだが、その傍から「っ、あいたたたた…」等と言って腰に手を添えているようでは、説得力は皆無。
「…なんだかもうおじいちゃんだな、キラ…」
そんなキラの様子に、一瞬で毒気を削がれてしまうアスラン。
「ま、OSの調整やプログラミングで座りっぱなしで、そんでオレらのMSの整備作業で無理な体勢ばっかしてれば、そりゃ腰にもくるぜ。
夜ちゃんと休めてんなら、まだマシなんだろうけど?」
含みを込めた語尾をアスランにかけてやると、ムッとして睨み返してくる。
普段面白くないくらいポーカーフェイスのアスランが、キラに関してつつくと面白いくらい顔も態度も崩してしまう。
これが楽しいからやめられない。
「とにかくキラ、今日はもう部屋で休んだらどうですか? 隊長から許可ももらったんでしょう?」
「うん…そうだけど…、デュエルの調整も仕上げたいし、やっぱりアサルトシュラウドに、ストライクのエネルギーパックシステムを流用
したいから、そのへんも…」
「何も今日明日には仕上げないと戦闘に差し障るってわけじゃないんだ。そうじゃなくてもお前、こっちに来てから働き通しだろう。
休めと言われた時くらい休んでおけ」
当のデュエルの持ち主であるイザークにぴしゃりと言われ、しゅん、と肩を落としてしまうキラ。
「…素直にキラの体が心配だって言ってあげればいいのに」
「っ!!」
キッとニコルを睨みながらも、顔は真っ赤になっている。
「うっわ、イザークお前、その顔鏡で見てみろよ。見事に真っ赤だぜ」
「煩いっ!! 貴様こそっ、さっきキラの腰揉んでた時、鼻の下伸びてたぞ!!」
「はぁ??」
「やめろよ本人の前で! 固まってるじゃないか」
「……」
アスランの制止に、二人の舌戦はぴたっと止まるが。
……固まっているというよりも、本人はよくわかっていないようだ。
きょとんとしたその顔が可愛くて、ニコルがクスクス微笑む。
「とにかくキラ、今日はもう上がって、ゆっくり休んで下さい」
「…えと………、…それじゃ…今日だけ、先にあがってもいいかな」
「勿論ですよ!」
「後の事はまかせて、ゆっくりしておいで」
「そういう事だ」
「あ、腰冷やすなよ。医務室でもらった温感湿布貼って、それから、布団抱き締めて丸まったまま寝ないようにな。余計腰曲がるぜ」
「うん、わかった。ありがとう。…じゃあ、ごめんね!」
全員に手を振って、キラは談話室から出ていく。
○UPの際の海原のツブヤキ○
パラレル要素入りまくりですので、整理しますと、
・キラはアスランと一緒にプラントに行って、一緒にアカデミーへ進んでザフトへ入った
・ストライク他五機のMSはザフト製
・キラだけ制服が緑
・四人はパイロット、キラはOS調整担当(これは次くらいで話題に上がります)
という感じになってします。
優希様、リクエストありがとうございます! ハッピーエンド目指して頑張ります!