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片想いって切ない



第4巻614番 【山口女王】(やまぐちのおほきみ)
相思はぬ 人をやもとな 白たへの 袖漬つまでに 音のみし泣かも
私を愛してはくれないのだと思うと 切なくて 衣の袖も濡れるほど激しく 声をあげて泣いています

第4巻615番 【山口女王】(やまぐちのおほきみ)
我が背子は 相思はずとも しきたへの 君が枕は 夢に見えこそ
私の愛するあの人は 私を愛してはくれない 本当は私を好きならば あなたの夢の中に 見えるはずよ

第4巻656番 【坂上郎女】(さかのうえのいらつめ
我れのみぞ 君には恋ふる我が背子が 恋ふといふことは言のなぐさぞ
恋しいと想っているのは私ばかり あなたが恋しいよと言うのは口先ばかりだわ

第4巻657番 【坂上郎女】(さかのうえのいらつめ
思わじと言いてしものを はねず色の うつろひやすき 我が心かも
もう あなたの事を考えるのはやめとうと思ったのに また、あなたを想ってる

第4巻658番 【坂上郎女】(さかのうえのいらつめ
思へども 験もなしと知るものを 何かここだく 我が恋ひわたる
どんなにあなたを想っても仕方がないとわかっているのに どうしてこんなに 恋しく切ないんでしょう

第4巻679番 【中臣郎女】(まかとみのいらつめ)
否と言はば 強ひめや我が背 菅の根の 思ひ乱れて 恋ひつつもあらむ
あなたが いやだとおっしゃるのなら 無理に逢って下さいとは言わないわ 切なく苦しい想いで恋い慕っていましょう

第4巻682番 【大伴宿禰家持】(おおとものすくねやかもち)
思ふらむ 人にあらなくに ねもころに 心尽くして 恋ふる我かも
私を思ってくれる人でもないのに 繰り返し繰り返し あれこれと尽くし 片思いしているんだ


第4巻707番 【栗田女娘子】(あはためのをとめ)
思ひ遣る すべの知らねば かたもひの 底にそ我は 恋ひなりにける
切ない気持ちを 紛らすすべもないので 片思いの哀しみのどん底に 沈んでしまいました

第4巻717番 【大伴宿禰家持】(おおとものすくねやかもち)
つれもなく あるらむ人を 片思に 我は思へば 苦しくもあるか
私に関心がなく つれないあなたに片思いしている私は 苦しくてどうしようもないよ

第4巻719番 【大伴宿禰家持】(おおとものすくねやかもち)
ますらをと 思へる我や かくばかり みつれにみつれ 片思をせむ
たくましい男だと自負していたのに こんなにも 恋やつれするほどの 片思いをしているよ

第6巻1027番 【三方沙弥】
橘の 本に道踏む 八街に 物をそ思ふ 人に知られず
橘が植えてある人通りの多い道の 三叉路に立って進む道に悩むように あれこれ思い悩んでいるんだ あの人にこの想いを知ってもらえないままに

第8巻1500番 【大伴坂上郎女】
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものそ

夏の野に ひっそりと咲いている姫百合のように 相手に伝わらない片思いの恋は 苦しいばかり