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単身赴任は寂しいなぁ


外国からの侵略に備えて、諸国の軍団の兵士の中から派遣され、今の北九州の防備に当たった防人の歌です。
勤務年数3年で、東国人(今の関東地方に住む民衆)を多く採用していました。

第20巻4321番【国造丁長下郡の物部秋持】
恐きや 命被り 明日ゆりや 草がねた寝む 妹なしにて
拒めない 勅命を受けて 明日から 野宿しながら旅路を行かなければならない 妻もいなくて


第20巻4327番【長下郡物部古麻呂】
我が妻も 絵に描き取らむ 暇もが 旅行く我は 見つつ偲はむ
おまえの 似顔絵を描く時間でもあったなら 旅の間も 見て偲んでいられるだろうに


第20巻4351番【望陀郡の上丁玉作部国忍】
旅衣 八重着重ねて 寝ぬれども なほ肌寒し 妹にしあらねば
旅衣は 重ね着して寝ているけれど それでも寒いよ 妻と一緒に寝ているわけじゃないから


第20巻4366番【信太郡の物部道足】
常陸さし 行かむ雁もが 我が恋を 記して付けて 妹に知らせむ
常陸(今の茨城県)に向かって 飛んでゆく雁はいないかなあ この恋心を書いた手紙を 雁の足に結び付けて 妻の元に届けたい


第20巻4387番【千葉郡の大田部足人】
千葉の野の 児手柏の 含まれど あやにかなしみ 置きて高来ぬ
千葉の野の(今の千葉県習志野市あたり) 児手柏の蕾のように 若く初々しいあの娘のあどけなさが なんとも痛々しくて 手も触れずに置いて出てきたよ


第20巻4390番【猿島郡の刑部志加麻呂】
群玉の くるにくぎ刺し 固めとし 妹が心は 動くなめかも
群玉の 枢に釘を刺し込むように 3年間の貞操をしっかり言い聞かせてきたんだ 妻の心が揺らぐものか


第20巻4418番【荏原郡の上丁物部広足】
我が門の 片山椿 まこと汝 我が手触れなな 地に落ちもかも
俺の家の門の 斜面に咲く椿よ(愛する女よ) 本当におまえは 俺がいない間に 他の男のものになったりしないだろうか


第20巻4429番
厩なる 縄絶つ駒の 後るがへ 妹が言ひしを 置きて悲しも
馬が 馬小屋の綱を振り切って 飛び出して来るように 私も一緒に連れてってと言いながら だだをこねた妻を 置いて来たのが悲しい