12月の章 12月24日 純白の樹氷

24日の朝は、うす紅色の光に包まれた。
木々は真白の樹氷となっていた。


「イブかぁ・・下界では今日は賑わっているんでしょうねぇ」

都会育ちのウミさんが、つぶやくように言った。
ウミさんと私は、今回初めて越冬を経験する
いわば同期生。 歳は2つ下だが口が重く、
やけに落ち着いている。

「・・きっと賑わっているよね」

ここにいると、都会の賑やかさが
遠い国のできごとのように思えてくる。



12.24  純白の樹氷


12.24 カラカラと小さく音を立てて、雪の中へ落ちていった

明け方の、ほんの一瞬の純白の樹氷たちは
朝日がさし込めると、
カラカラと小さく音を立てて、
雪の中へ落ちていった。

「雪も熊笹を覆いつくしたし、
今日は山スキーの練習にいこうよ」
ウミさんをさそってみた。

「いきましょう」

山スキーの技術の大事さは、
ウミさんもよくわかっている。

仕事が一段落着いた午後の時間
隊長に留守番をお願いして、
ウミさんと山スキーの練習にでかけた。


『かんばの丘ゲレンデ』

過去の越冬隊員もここで練習をした丘。

到着すると、自分たちで雪を何度も何度も踏み固める。
これは、けっこうつらくて時間がかかる。

小一時間かかってようやく出来上がると、
いよいよ山スキーの練習だ。

「よーし滑るぞぉー!!」
 この一瞬のために頑張ったんだ、気合いが入る。

でも、さっと滑るわけにはいかない。
なにせスタートして2〜3回ターンするともう下まで着いてしまう。 
下に着くと自力で登っていかなければいけない。

距離がものすごく短いだけに、一回が貴重だ。

頭の中でパラレルターンをイメージしながら、一本一本滑る。

時間をかけ思い思いに何本か滑っていると、
ウミさんが途中でスキーを止めて、じっと、沼を見ている。
「静かですよね・・・」

私も、実は同じことを感じていた。 スキーを止めてみる。
「静かだよね・・・」

スキー場の華やかさが、なぜか頭に浮かんできた。


12.24  かんばの丘ゲレンデ

  
 
12.24 越冬隊 山スキーの練習場所




12.24 分厚く雪が積もる 風下側の屋根
初めての山スキーの練習を終えたあと、
二人で少し離れた自炊小屋周辺の
雪の状況を点検にいくことを頼まれていた。

自炊小屋を丁寧に見て回ってみると、
風下側の屋根にはもう分厚く雪が積もっている。

「すごい!!」 同時に声が出た。

「これは、いよいよ雪下ろしですね」

屋根の雪下ろしをまだやったことがない二人は
『 いよいよ雪下ろしか!!』
という期待のようなものを持っていた。

「早速隊長に報告に行こう」

私たちは点検の報告をしに、急いで小屋に戻ることにした。


                つづく