1月の章 1月 8日 埋もれゆく標識

新しい年が明けた。 

しかし、それは暦の上だけの事であり
雪また雪の生活になんの変化もなかった。

紅白歌合戦に送った電報は、
やはり今回も読まれなかった。

真冬の尾瀬での越冬生活など、
ほとんどの人は無関心なんだろう・・と
あらためて知らされたように感じた。




1月に入ってからは、雪はさらに本格的になり
ついに、道案内の標識さえも雪に埋もれてきた。

「尾瀬ヶ原」「三平峠」と書いてある
標識の字には、どこか人の気配が感じられていたが


この標識が、雪に埋もれて見えなくなってくると
これでいよいよ人の気配がまったくない
厳冬期の尾瀬の世界に入っていくのだ・・
という思いが強くなっていった。

 


1.5 1月になると、さらに本格的な雪となった



1.8 ついに道案内の標識も雪に埋もれてきた





1.15 雪に埋もれてゆく  キャンプ場の水飲み場 
外の気温は、−18度にも下がり、
小屋内の台所でさえも、火を止めると
−10度近くまで下がってしまう。

放っておくと、野菜はもちろんのこと、
すべての物が、ひとたまりもなく凍ってしまい、
もう2度と食べられなくなってしまう。

冬の間、外から野菜を補充できないため、
生の野菜は、長い越冬生活に置いて
唯一の貴重な新鮮野菜だ。

特に大切にしなければならない。


今食べている野菜は、 11月に背負って小屋まで上げた野菜だ。

背負って小屋まで上げた野菜は、新聞紙を何重にも巻き、
床下の室(むろ)に丁寧に入れる。

それを、少しずつ食べて、なんと4月まで保たせるのである。


冬の間雪に閉ざされる、山奥の豪雪地帯での
昔から行われてきた保存方法のすごさには、驚かされてしまう。

我々は、キャベツの芯なども捨てずに
うすーくスライスし、スープに入れたり、野菜炒めにしたりして
工夫して調理して、大切に食べた。



 1.15  雪がおもしろい形だ! 大雪の尾瀬沼と燧ヶ岳


雪はキャンプ場の水飲み場を、
とうとう埋めるところまできた。

屋根の雪が、積もった雪と
くっついてきた。 
明日は、雪を下ろさないと・・。

まさに、豪雪地帯だ。


同じ日、尾瀬沼に
不思議な光景を見た。

あれだけの雪が降ったのに
ある所だけ積もっていない。

地熱の関係なのだろうか・・。

ふと、ふわふわの雪が
お正月の『 お鏡餅 』
に見えてきた。

まさに新年にふさわしい
風景にも思えた。

  つづく