ウスイロツユクサ;花色の正体
Commelina communis f. caeruleopurpurascens Makino

 

ウスイロツユクサ・・・多くの図鑑にはこのツユクサについての記載はないが、日本草本植物総検索誌(杉本順一1973)には「花淡青」、神奈川県植物誌2001では「淡青色の品種」をウスイロツユクサというと書かれている。 
実際に野外では濃い青色の花をしたツユクサのなかには、ときどきうすい青色(淡い青色、水色)の花色のツユクサが見られる(Fig.1-3)。 

 
 Fig.1
 
 Fig.2
 
 Fig.3

しかしこの色以外にも、藤色〜赤っぽい紫色のような色合いの花も観察される(Fig.4-6)。 

 
 Fig.4

 Fig.5
 
 Fig.6

ウスイロツユクサの品種名caeruleopurpurascensは「青色の+淡い紅紫色の」という意味であるから、単に淡青色の花だけではなく、淡い紫色もウスイロツユクサに含まれるように思える。 むしろ淡い紫色のツユクサに出会うと、見慣れた濃い青色のツユクサとはかけ離れた色あいのため、変わったツユクサだという印象をうける。

ウスイロという色はいったいどのような色なのだろう。 辞典を調べると、ウスイロとは「薄色」という色が説明されている。

うす-いろ 【薄色】
 (広辞苑 第六版. 2009. 岩波書店)
  1 染色の名。薄紫色または薄二藍(ふたあい)。
  2 経は紫で、緯は白の織色。緯白(ぬきじろ)。

うすいろ【薄色】 (色名がわかる辞典. 2011.講談社)
  色名の1つ。浅紫うすむらさきともいう。薄く、ややくすんだ紫色のこと。

うすいろ【薄色】  (大辞林 第三版. 2006. 三省堂) 
  1 色の薄いこと。薄い色。
  2 薄紫色。織り色では経(たて)は紫,緯(よこ)は白。
  3  襲(かさね)の色目の名。表は薄紫色。裏は薄紫色のやや濃いものか白。

書籍にも「うす色」について次のように記述されている。

うすいろ : (福田邦夫2012. 色の名前507.主婦の友社)
 薄色というのは一般には薄い色全般を指すのだが、伝統色名としては紫の薄い色のことになる。 日本で官位を象徴する衣服の色の最高位は、古来、紫と決まっていて、濃(こき)色、薄色といえば、紫の濃淡であることはことわるまでもなかったのである。
    。

浅紫 薄色 :  (吉岡幸雄 2009. 日本の色辞典. 紫紅社)
 淡い紫色。紫は最高位の色で、たんに「濃き」「薄き」といえば紫の濃淡をあらわすとされ、薄色とも呼ばれた。
   


 WEBで「薄色」を検索すると

 #a89dac/R:168 G:157 B:172/C:18 M:30 Y:0 K:10

 


このようにウスイロツユクサの「うすいろ」とは、単に「淡い色」というのでなく、伝統色名の「淡い紫色」をさしているのではないだろうか。

 

ウスイロツユクサの花色はいったいどのような色なのかは、命名した牧野博士の原記載の文献にあたってみないと正確なことはわからない。 

原記載の文献を読んでみると、牧野博士はUsuiro - tsuyukusa 「Flower light bluish-purple.」 として新品種の報告をしている(MAKINO 1931.J.Jap.Bot.7:4)。


つまりウスイロツユクサとは淡青色のツユクサではなく「light bluish-purple(淡い青みがかった紫色)」の花色、伝統色名としての「薄色(淡い紫色)」の花をしたツユクサこそが、牧野博士が命名した品種である。 


現在では、このウスイロツユクサCommelina communis f. caeruleopurpurascens Makinoについては、英国王立キュー植物園のツユクサの分類リストでは、ツユクサCommelina communis var. communis L. のシノニムとして扱われている。 

 

                                                                            2014.3.1

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