ツユクサの花序柄


ツユクサ(Commelina comunis L.)の苞を広げてみると、普通花を咲かせる横向きの花序柄と花をつけない直立した花序柄、がある。 この不思議な2個の花序柄について調べてみた。


1.ツユクサの花序

上の画像のように、花をつけない直立した花序柄と、1-4個の花を有する横向きの花序柄をもったツユクサの割合は88%で、稀に直立した花序柄にも1花をつけ苞の上下に2つの花を咲かせるツユクサは8.5%であったことが報告されている(小野勇 1946. 採集と飼育. VOl.8 )。 

さらに直立した花序柄に1個だけでなく、複数の花柄と花を有する場合も見られる。


ごく稀に直立した花序柄の最上部に、細い葉や苞を形成する場合もある。

   


なぜ、このように直立した花序柄に葉や苞が形成されるのだろうか? 


2.ツユクサの仮軸分枝

ツユクサのシュートを観察すると、主軸の最上部に最初の苞ができ、苞柄の脇と葉の間から小さな茎が見られる。 この小さな茎の基部にはごく短い節間があり、その上部に前葉があることから、この小さな茎は側枝(側軸)で、苞柄が主軸である。

 
1.ツユクサの最初にできた苞
 
2.葉鞘内の小さな茎
 
3.主軸と側枝(側軸)

ツユクサの茎は一見単軸のように見えるがそうではなく、側枝(側軸)が次々と発達して成長しあたかも主軸のようになる仮軸分枝である。


  4. 側枝が発達したみかけの主軸(仮軸)

 5.仮軸分枝

主軸である茎または側枝の最上部にある苞内の花序柄をみると、直立した花序柄はごく稀に葉や苞葉をつけ、さらにその上部に柄をつくる主軸で、その主軸と苞葉の間から出る横向きの花序柄は側枝であると考えられる。

 


ツユクサ科で同じような花序をもつものはないかと探したところ、花のつくりはそっくりだが大きな苞をつけないAneilema属の花序に似ていることに気がついた。
Aneilema属の初期の花序で、最も下部と最も上部だけに注目して両者を比較すると、ツユクサの2つの花序柄のつくりにそっくりであった。 

   


ツユクサの2つの花序柄は変化のようすから、横向きの花序柄は側枝、直立した花序柄は退化の過程(進化の過程)にあるが花序の主軸であると推測される。 


追記: 苞の中にさらに苞をもち、花を咲かせているものもあった(マルバツユクサCommelina benghalensis L.)。

   


*植物用語であるpeduncleは花序柄、pedicelは花柄とした。

【参考文献】
・津山尚 1948. ツユクサの花序の構造に就て On the structure of the inflorescence of Commelina communis L. Bot.Mag.Tokyo, Vol.61,No.721-726 :99-101

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