アメリカキンゴジカ Sida spinosa |
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アメリカキンゴジカは熱帯アメリカ原産の帰化植物で、日本では1950年に群馬県で採集された記録があります。( 「日本の帰化植物」平凡社より ) 今年(2008)の9月に田んぼの脇に生えているのを見つけました。 その日は夕方でしたので花はしぼんでおり、イチビの果実に似たかわった果実をつけた植物だと思いました。 数日後花を見ようと出かけましたが、その時も花が見られませんでした。 |
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1.花の開花
アメリカキンゴジカは、1日のうちで花を開く時間はとても短くて、晴れた日の9時半くらいから花を開き始め、お昼前にはもう花をしぼませています。 (写真1〜4)
![]() 写真1 9:36 蕾がふくらんできた (2008.10.5) |
![]() 写真2 9:44 開花し始める |
![]() 写真3 9:52 満開の状態 |
![]() 写真4 10:50 花はしぼんでしまいました |
日当たりの良い道路脇に咲くアメリカキンゴジカの花を5つ観察し、開花時間をグラフで表すと次のようになりました。 1つの花では、なんと1日のうちわずか1時間程度しか花を開かない変わり者です。
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※この場所では、多くの花が11:00前後になるとしぼみはじめ、11時半頃にはすべての花がしぼんでしまいました。
2.花のつくり
アメリカキンゴジカの花弁は左右が非対称で、短くなった花弁の縁には腺毛があります。 花は、完全に開くわけでもなく半開き状態という、とても変わった咲き方をします。 図鑑では離弁花になっていますが、花弁の基部は合着しています。 (写真5・6)
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写真5 左右が非対称の5枚の花弁 | 写真6 花弁の基部は合着する |
雄しべはたくさんあるように見えます。 数えてみると、葯は10〜20個あり、2〜4本ずつセットになっています。 (写真7・8)
雄しべの花糸は合着し筒状になっていて、雌しべの花柱はその中を通って、柱頭を放射状に5方向に出しています。
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写真7 雄しべ(葯が10個)と雌しべのようす | 写真8 雄しべだけを取り出したもの (葯が20個の雄しべ) |
合着した雄しべの花糸を開いて、雌しべと子房を取り出してみました。 (写真9・10)
雌しべの花柱は中程から5本に分かれています。 写真では5つの柱頭それぞれに黄色い花粉が着いています。 子房の胚珠を調べると、大きめの胚珠が5個ありました。
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写真9 合着した雄しべの花糸 | 写真10 雌しべ:5つに分かれた花柱と子房のようす |
花はお昼近くにはもうしぼんでしまいます。 (写真11)
しぼんだ花の断面を見ますと、花弁が内側にクルリと巻き込んでいます。 花弁の外側には太い隆起した脈がみられ、まるでバネのように強い力で内側に巻き込んでいます。 このしぼむ仕組みで自家受粉は完全に行われるのでしょう。 (写真11〜13)
翌日になるとしぼんだ花は萼の外へと押し出されてしまいます。 (写真14)
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写真11 しぼんだ花 | 写真12 しぼんだ花の断面 |
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写真13 花弁の外側の太い隆起した脈 | 写真14 翌日に押し出されるしぼんだ花 |
3.果実と種子
「原色日本帰化植物図鑑」(保育社)と、「日本の帰化植物」(平凡社)には、アメリカキンゴジカの1つの果実には5個の分果があり「各分果には種子が2個」と記載されているのですが、『石川の植物』のmizuaoiさんが、「アメリカキンゴジカ」のFileの中で「それぞれの分果には種子が1個しかありませんでした」と報告されました。
さっそく私もこちらに咲くアメリカキンゴジカの果実を、10数個調べてみました。 違う株から採ったいずれの果実も、mizuaoiさんの報告どおり、それぞれの分果には種子は1個だけしか入っていませんでした。 (写真15・16)
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写真15 果実と5つの分果 | 写真16 5つの分果には、種子が1個ずつ入っている |
2つの図鑑の記述のように種子が2個あるとするならば、胚珠の段階では2個あって、そのうち1個だけしか成長していないことも考えられます。 そこで、前日に花が咲き終わったばかりの子房の胚珠も調べてみますと、やはり胚珠は5個しかありませんでした。 (写真17・18)
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写真17 前日に咲き終わった花の子房 | 写真18 子房と5個の胚珠 |
つまり1つの分果には種子は2個ではなく、1個だけできる(種子は5個できる)ということです。 mizuaoiさんの報告の方が2つの図鑑の記述よりも正しいことになりそうです。
※後日「日本の野生植物・草木U」(平凡社)のキンゴジカ属の解説を読んだところ、「胚珠は各室に1個。分果は・・・1個の種子がある」と書かれていました。 やはりそれぞれの分果には種子が1個が正しいようです。
4.訪問昆虫
アメリカキンゴジカの花が咲き出すと、コハナバチの仲間が頻繁に花を訪れます。 花弁が不揃いなので、半開きでも隙間があちこちに開いていますので、ちょうどその隙間から花粉を食べていました。
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写真19 アメリカキンゴジカに訪れるコハナバチの仲間 |
また、体ごと花の中にもぐりこんで、全身花粉まみれになっているコハナバチもいました。 (写真19) この場所では、コハナバチがポリネーター(送粉者)であることは間違いなさそうです。
(08.10.8)
【 参考文献 】
・長田 武正
1976 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社
・清水 建美 編 2003 「日本の帰化植物」 平凡社
・佐竹 義輔・大井次三郎・北村 四郎 2002. 「日本の野生植物・草木U」 平凡社
・本多 郁夫
2008 石川の植物・「アメリカキンゴジカのFile」 ホームページ
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