アメリカウンランモドキ (Agalinis heterophylla

     

2005年9月 福岡県北九州市の市街地の草むらに、淡いピンク色の大きめの花が咲いているのを見つけました。 今まで見たことがない花で、新しい帰化植物だと感じました。

 どうやら、ゴマノハグサ科 Agalinis属のアメリカウンランモドキ(新称)という、2000年に長崎県佐世保市で発見されたばかりの北アメリカ原産の帰化植物のようです。

 勝山・中西(2003)は「Agalinis属の植物は花は美しいが、わが国で園芸植物として利用されたことはない」と述べていますので、新しい帰化植物であることは間違いないようです。



まだ帰化植物図鑑にも載っていない新しい帰化植物ですので、詳しいことはよく分かりませんが、観察したことをまとめてみました。        

                        (05.9.10)





 1.花のつくり

写真1 約2〜2.5cm

写真2 約2cm

花は直径約2〜2.5cmで、1株にたくさんの花を咲かせます。 花冠の色は淡いピンク色で綺麗です。

花冠は筒形で先が5裂していて、裂片の先は円く縁には細かい毛が生えています。
(写真1)

花冠の長さは約2cmで、花柄は短く約2mm ほどです。(写真2)


写真3 つぼみと萼

写真4 花

つぼみはぷっくりとしていています。 萼裂片は5個で狭三角形で先が細くとがり、裂片の中肋には明瞭な5脈が見られます。(写真3)

雌しべは長くて目立ち、柱頭部分はやや太くなっていて下向に曲がっています。(写真4)


 2.雄しべ・雌しべ

写真5 雄しべ
 写真6 雄しべの花糸の軟毛

雄しべは4本で、2本が長く2本は短くなっていて、長い方の葯は1カ所がくっついています。(写真5)

雄しべの花糸や葯には、かなり長い軟毛が生えています。(写真6)


写真7 花後 


花後は、花冠がするりと抜け落ち、あとに雌しべの花柱が残ります。(写真7)

花の後にはほとんど果実ができていることから、花が開いている時は他家受粉を行い、花が落ちるこの段階で、どうやら自家受粉をしているのではないかと思われます。


 3.葉・茎

写真8−1 葉 

写真8−2 茎と葉 

 写真8−3 茎

葉は対生で披針形です。 葉の上面や縁は一定方向に猫の舌のようにザラついています。(写真8−1.2)

成長してゆくにつれて茎は木質化して、堅くなっていきます。(写真8−3)



4.果実・種子

さく果は球形をしていて下半部が萼筒に被われています。 切ると中央の軸の周りに小さな種子がたくさん並んでいます。(写真9−1〜3) 

写真9−1 若い果実 写真9−2 若い果実の断面 写真9−3 果実のようす

アメリカウンランモドキの果実は秋になると熟し上部が裂けて口を開き、小さな種子をこぼします(写真10)

写真10  口を開く果実


種子は長さ 0.8〜1.0mmほどで、表面は硬めのスポンジ状でふわふわとしていて、中に種子が入っています。 (写真11・12 スケールは1目盛=0.2mm

写真11 種子 0.8〜1.0mm  写真12 種子の断面

【参考文献】

  ・勝山輝男・中西弘樹 2003 「ゴマノハグサ科の新帰化植物、アメリカウンランモドキ(新称)」 植物地理・分類研究 Vol.51:73-74



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