ゲンカイイワレンゲ(Orostachys malacophylla var. malacophylla) と クロツバメシジミ |
![]() 案内役の クロツバメシジミくん |
「みなさん こんにちは〜」 「案内役の クロツバメシジミです。」 今回の特集は、ボクが皆さんをご案内します。 まずは自己紹介からですね。 シジミチョウの仲間です。 翅の表面は、 真っ黒でちょっと可愛いしっぽもあるんですよ。 ボクが住んでいるのは、関東地方より西で、 広い範囲にいます。 だから、特別珍しいチョウではないのですが、 “すみか”が決まっているので、 なかなかお目にかかれないチョウでもあります。 (ということは、これって珍しいチョウなのかなぁ・・) |
![]() 翅の表面は、真っ黒で ちょっと可愛いしっぽもある |
その特別の“すみか”へ 今からご案内しますね。 ここは、九州の玄界灘。 「荒波」で有名な所ですよ。 足元に気をつけてくださいね。 この玄界灘の岩場にしか咲かない、 アオノイワレンゲがあります。 ほら、葉が重なり合った様子が蓮華 (蓮の花)のようでしょ。 |
![]() 玄界灘の荒波 |
![]() アオノイワレンゲの葉 |
アオノイワレンゲの分布は変わっていて、北海道と東北地方、そして九州北部なのだそうです。 この九州北部の玄界灘の岩場に咲くアオノイワレンゲは、北海道や東北地方に咲くものと区別して、「 ゲンカイイワレンゲ 」と命名されています。 |
![]() 蓮華に似ている (古代蓮の花) |
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![]() 花をつける花序がのびてくる (10月中旬) |
ゲンカイイワレンゲは10月中旬頃から、 花をつけるための花序がのびてきます。 11月上旬には、花序がこんなに長くなりました。 この、イワレンゲの咲くところが、 実はボク達の“すみか”なんですよ。 それでは、ボクの仲間を紹介しましょう! ほら、もうあそこで待ってますよ。 |
![]() 花序が長くなる (10月下旬) |
![]() 岩にそっくりな翅の色! |
「えっ、どこにいるのかわからないって・・・?」 そうなんですよ、岩の色にそっくりですからね。 わかりにくいですよね。 慣れてくると、ちゃんといるのがわかりますよ。 翅の白いラインが美しく、 腰から尾にかけての 群青色も綺麗です。 |
![]() 翅を広げると、わかりましたね |
11月でも、海岸には綺麗な花が見られます。 西日本の海岸に生えるホソバワダン。 海岸に多い4mもの高さがあるダンチク。 初冬に黄色い花を咲かせるシマカンギクもたくさん咲いています
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ホソバワダン | ダンチク | シマカンギク |
しかし、僕たちは ベンケイソウ科のイワレンゲやツメレンゲ等の 近くでしか住めないんです。 それは、僕たちの幼虫が食べる草が、 「ベンケイソウ科の植物だけ」って 決まっているからなんです。 |
![]() イワレンゲの仲間の近くでしか住めない |
![]() ペアリングのカップル 最も狙われやすい |
ゲンカイイワレンゲのすぐ近くの岩場で、 ペアリングのカップルがいます。 ペアリングの時は、お互い動きがとれないので 最も狙われやすい、危険な時でもあるんですよ。 こちらは産卵中です。 母親は誕生した幼虫が、迷わずに ちゃーんと餌にたどり着けるように、 産卵するところを慎重に選びます。 チョウの母親の深ーい愛情ですね。 |
![]() 産卵するところは慎重に選びます |
![]() 小さな花が満開 (11月中旬) |
11月上旬には、 いよいよゲンカイイワレンゲの 花が咲き始めます。 小さな花が 下から順に咲いていきます。 中旬には、たくさんの小さな花が満開になります。 それはとても、みごとですよ。 |
![]() 玄界灘の岩場に咲く (11月中旬) |
![]() 花が満開のゲンカイイワレンゲ (11月中旬) |
ゲンカイイワレンゲの花が満開の頃 花には蜜がたくさんあるのに 僕たちは、もう活動することが出来なくなっています。 寒さで体が動かなかったり、鳥などの敵に狙われて翅もぼろぼろです。 でも、ゲンカイイワレンゲのおかげで 僕たちの幼虫が、ちゃんと 冬を越すことが出来るんですよ。 |
![]() 翅がぼろぼろになっても 頑張っている |
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12月上旬、 ゲンカイイワレンゲは花も終わりに近づき、 赤い実が見られるようになります。 この頃の、ゲンカイイワレンゲの白い花びらと 赤い実のコントラストも、なかなか綺麗ですよね。 このあと、花をつけていた株は枯れて 玄界灘にもいよいよ厳しい冬が訪れて来ます。 |
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花も終わり赤い実がなる (12月上旬) |
『ゲンカイイワレンゲとクロツバメシジミ 』 いかがだったでしょうか。 ツメレンゲやイワレンゲが生える環境もだんだん少なくなりつつあります。 これらの植物が生育しているからこそ、僕たちの仲間がそこに住めるんですよね。 ![]() そんな僕たちの大切な場所で、またお会いしたいですね。 (2003.11 : 08.12) |
【 参考文献 】
・佐竹 義輔・大井次三郎・北村 四郎 2002 「日本の野生植物・草木U」 平凡社
・新開 孝 2003 「里山 蝶ガイドブック」 TBSブリタニカ
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