キキョウソウの閉鎖花 Triodanis perfoliata |
北アメリカ原産の帰化植物で、最近は公園の土手など、あちこちで花を見かけるようになってきました。 キキョウソウは、まず初めに閉鎖花をつけ、のちにふつうの花を咲かせます。 茎の中部〜下部に、閉鎖花をたくさんつける植物です。 (写真 1) 閉鎖花には萼片が3枚のものと、4〜5枚のものがあります。 画像は萼片が3枚のものです。 真ん中に小さなドーム状の、退化した花冠が見られます。 (写真 2)
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写真 1 キキョウソウ | 写真 2 萼片が3枚の閉鎖花 退化した花冠 |
小さなドーム状の退化した花冠を開いてみると、雄しべが3個中央に集まっています。 開放花では、雄しべは5個ありますので、この閉鎖花は雄しべが2個少なくなっています。 (写真 3) 3個の雄しべは、中央にある雌しべにぴったりとくっついています。 ピンセットでくっついている雄しべを離すと、中央に雌しべが確認できます。 (写真 4)
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写真 3 花冠を開くと、3個の雄しべ | 写真 4 3個の雄しべと、1個の雌しべ |
雌しべを顕微鏡で見てみると、花粉が柱頭に何カ所かにかたまって着いていました。 おそらく雄しべの葯がくっついていた部分でしょう。 (写真 5) また、雄しべを顕微鏡で見ると、葯と赤く染まった花粉が確認できました。 (写真 6)
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写真 5 閉鎖花の雌しべの柱頭につく花粉 | 写真 6 雄しべの葯と花粉 |
萼片が3枚の閉鎖花では、子房は2室に分かれています。 (写真 7) 子房が2室なので種子をこぼす窓も2個しかありません。 (写真 8) 普通の花の子房は3室で、種子をこぼす窓も3個あります。 この閉鎖花は開放花に比べ、雄しべを減らしたり、子房の部屋を少なくしたり(種子の数も少ない?)と、コストを抑えたつくりになっているようです。
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写真 7 2室に分かれている子房 | 写真 8 種子をこぼす窓は2個 |
一方、開放花のすぐ下にある大きめの閉鎖花には、萼片が5枚のものもみられます。 (写真 9) 退化した花冠を開くと、雄しべは5個あります、開放花と同じ数です。 (写真 10)
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写真 9 開放花のすぐ下にある、萼片5枚の閉鎖花 | 写真 10 萼片が5枚の閉鎖花 |
雄しべは、中央に集まっていて、雌しべにぴったりと癒着してます。 (写真 11) それらを離してみると、5個の雄しべと1個の雌しべが確認できます。 (写真 12)
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写真 11 5個の雄しべ | 写真 12 5個の雄しべと1個の雌しべ |
子房は3室に分かれていて、種子をこぼす窓も3個あり、普通の花の子房と同じつくりをしています。 (写真 13)
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写真 13 3室に分かれている子房 |
この萼片が5枚の閉鎖花は、開放花のすぐ下にあるものや、栄養状態が良い大きな株に見られます。 キキョウソウは栄養状態などによって、雄しべや子房の部屋を少なくしたタイプの閉鎖花と、普通の花と同じ作りの閉鎖花をつくり分けているようです。
(08.5.17)
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近縁種のヒナキキョウソウにつきましては、 「ツユクサの庭」さんが“ヒナキキョウソウ”のページで、
閉鎖花らしき花の様子を、とても詳しく観察されていらっしゃいます。 素晴らしいページですのでご紹介いたします。
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【 参考文献 】
・長田 武正
1976 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社
・清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七 2002 「日本帰化植物写真図鑑」 全農教
・清水 建美 編 2003 「日本の帰化植物」 平凡社
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