ノヂシャの閉鎖花? Valerianella olitoria |
昨年ノヂシャ(ノジシャ)を見ていたら、みょうな位置?に果実が出来ていることに気がつきました。 (写真 1) この1カ所だけではなく、茎が2叉した真ん中に、1個の果実があちこちにできています。 花が咲かない位置のはずだと思いましたが、この年はこれ以上はわかりませんでした。
今年(’08)また、ノヂシャの果実ができる時期になりましたので、観察してみることにしました。
この果実は、茎が2叉した真ん中に1個できます。 こんな位置にも花が咲くのかもしれないと思い観察しましたが、花を見つけることはできませんでした。 それならば、でき始めはどうなっているのだろうと思い、よく観察してみますと、かなりほっそりした形のものが見つかりました。 しかし、これはもう果実の初期で硬い状態でした。 (写真 2)
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写真 1 2叉した真ん中にできる果実 | 写真 2 ほっそりした、初期の果実 |
さらに探してみると、茎の2叉の位置に、枯れているような極小さいものを見つけました。 (写真 3) 拡大してみますと、先っぽは半透明でふくらんでいます。 見た感じでは、閉鎖花のように思われました。 (写真 4)
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写真 3 とても小さい、閉鎖花らしきもの | 写真 4 半透明で先がふくらんでいる |
ノヂシャの花(開放花)は花冠の長さが約 1.6mmと、とても小さいのですが、それよりもさらに小さくて、半透明の花冠らしき部分は長さが
0.6mmしかありません。(写真 5) 右の開放花のつぼみと比べてみても明らかに形態が違うようです。 (写真 6)
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写真 5 開放花との比較 | 写真 6 開放花のつぼみ |
開放花のつぼみは、花冠がふっくらしていて、2枚の苞葉をもっていますが(写真 7)、この小さな花は貧弱で苞葉は1枚もありません。 (写真 8)
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写真 7 開放花のつぼみ (スケールは1目盛り 0.2mm) | 写真 8 全長約1mm |
この小さな花の半透明の部分を広げてゆくと、縁が丸くなっており花冠が閉じたものだということがわかりました。 (写真 9) あまりにも小さいので、うまく開くことができませんでしたが、半透明の花冠の中には、3個の短い雄しべと雌しべが1本ありました。 (写真 10)
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写真 9 どうやら花冠が閉じたもののよう | 写真 10 3個の雄しべと雌しべが1本ある |
開放花では、淡青色の5裂した花冠と、白い葯をもった雄しべが3本、雌しべが1本あります。 比べてみますと、つくりが似ています。 (写真 11) 開放花は白い花粉が見えますが、この花は小さすぎて花粉が確認できませんでした。 そこで、花冠の中にある短い雄しべを顕微鏡で見てみると、葯と花粉がはっきり確認できました。 (写真 12)
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写真 11 開放花 雄しべが3本、雌しべが1本 | 写真 12 閉鎖花?の雄しべ 葯と花粉 |
雌しべの柱頭に花粉がついているかまで確認ができませんでしたので、閉鎖花であるかどうかはっきりとわかりませんが、形態や咲く位置などから、閉鎖花に間違いなさそうに思われます。
ノヂシャは春に開放花をたくさん咲かせ果実を作りますが、さらに茎の2叉の部分にも このような、ごく小さな花(閉鎖花?)をつけ、とても念入りに確実に種子を作ってしまう方式を持っている植物のようだと思われました。
ノヂシャが、茎の2叉の真ん中に果実をつくることや、閉鎖花については、図鑑などには書かれていませんので、詳しいことをご存じの方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
(08.5.15)
【 参考文献 】
・長田 武正 1976 「原色日本帰化植物図鑑」 保育社
・清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七 2002 「日本帰化植物写真図鑑」 全農教
・清水 建美 編 2003 「日本の帰化植物」 平凡社
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