セリバオウレン  両性花・雄花・雌花
Coptis japonica var.dissecta



早春に可憐な花を咲かせるセリバオウレンが
今ちょうど満開です。 

図鑑によると、オウレンは、
・「両性花雄花がある」
  (日本の野生植物 平凡社) 

・「雌雄異株のものと同株のものがある」
  (原色日本植物図鑑 保育社)
 
・「雌雄異株で雄花雌花」がある。
  (山に咲く花 山渓) 

 とそれぞれ違うように書かれています。

どうも気になってきましたので

観察に行ってきました。


スプリング・エフェメラルのセリバオウレンが」という書出しでしたが、セリバオウレンは早春に花を咲かせますが、葉は枯れることなく年間を通してつけているのでスプリング・エフェメラル(春植物)ではないということを、『石川の植物』のmizuaoiさんから教えて頂きました。 mizuaoiさん ありがとうございました。

       1.雄花

          咲いている花の中で もっとも多く見られるのは、雄花をつけた株です。 花は真っ白でとても綺麗です。


雄花の雄しべは、花粉を出す前は中央に集まっていますが、花粉を出し始めると、
外に向かって倒れていき花火のように雄しべを広げていきます。

 
雄しべが花粉を出し始めたころの雄花 すべての雄しべから花粉が出ている雄花

雄花には、雄しべだけをもつ花(上の2つ)と、 退化しためしべが花の中心部に見られる雄花があるようです。

    
        この雄花は、雄しべに隠れるように 赤っぽい色をした退化しためしべが花の中心部にありました。




       2.両性花

    雄花のつぎに多く見られるものが、両性花です。 花にはめしべと雄しべがあって、萼や花弁は少し淡黄色っぽく見えます。

  両性花のめしべには、赤っぽいあずき色のものと緑色をしたものが見られます。
  茎の色も同じようにあずき色になっていたり・緑色になっていたりしています。


もしかしたら、これらの花が 花粉を出さないために雌花とされているのかもしれないと、考えましたが・・、




  ちゃんと花粉を出している
  花を見つけました。

  花粉を出し始めた
  両性花の雄しべは、  
  外に向かって広がっています。


  上の2つの写真の株の花も
  もうじき花粉を出すのだと思われます。


  3.雌花
 
    雄花と両性花に比べるとかなり数が少ないのですが、雌花をつけた株が ちゃんとありました。   

       雌花にはめしべだけが見られ、雄しべはまったくありません。 

        
       めしべの根元に赤い点のように見える部分が、雄しべが退化した部分だと思われます。           




  今回観察したこの場所では、
  雄花をつけた株がもっとも多く、
  次に両性花の株が見られました。

  雌花をつけた株が
  はたしてあるのかが
  疑問でしたが、

  数は少ないけれども
  やはりちゃんとありました。  




  (左の写真は 雌花の株)


                                                                        (07.2.24)

******** 追 記 (08.3.01) ***************************************

  4.雄花・両性花 同株
 
    雄花と両性花が同じ株に咲いているものを、見つけました。 

左の花・上の花:両性花         右の花:雄花


    1本の茎の左の花と上の花が両性花で、右の花は雄花です。 株数は雌花の株と同じく、ごく少ないようです。
    雄花と両性花を同じ株につけるものは、他にもキチジョウソウやバイケイソウなどがあります。   

左の花:両性花  右の花:雄花


     つまりセリバオウレンは、
      1.雄花をつける株
   2.両性花をつける株   3.雌花をつける株   4.雄花と両性花をつける株
      という4つの違う花をつけた株が見られることがわかりました。 

     植物用語事典によれば、「一部の個体は両性花、雄花、雌花のいずれかのみをつけ、他の個体はいずれか2種あるいは
     3種の花をつける場合を、離性といい、キクバオウレンやヒメニラでこの4タイプの性型が確かめられている」そうです。

     キクバオウレンはオウレンのことですから、キクバオウレンの変種にあたるセリバオウレンが、同じように4タイプの花を
     つけることは、理解できることだと思います。

      皆さんのお近くのセリバオウレンの花は、どんな花をつけているのでしょうか?            
                                                              (2008.3.01)

5.光に反応するセリバオウレン

 セリバオウレンの花の1日のようすです。 花茎はじっとしていずにこんなにも動き回っていたのですね、驚きました。

 

 光への反応を確かめてみるために、夜になったので、右側から強い光を当ててみました(動画では20秒から)。
 そうすると花は光の方に向き、花茎は一斉に光の方向に向かって動き出しました。

                                                                      (2010.2.13)

 【 参考文献 】
   ・北村 四郎・村田 源 1980. 「原色日本植物図鑑・草木編U」:213-214. 保育社
   ・畔上 能力 編 2000 「山渓ハンディ図鑑・山に咲く花」:325. 山と渓谷社 
   ・清水 建美 2001. 「図説植物用語事典」:262-263. 八坂書房
   ・佐竹 義輔・大井次三郎・北村 四郎 2002. 「日本の野生植物・草木U」86-87.  平凡社




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