アフリカ農民はスーパーへの供給を組織せねばならない―FAOが警告

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.10

 アフリカ小農民は、新たな市場に参入しなければスーパーマーケット拡大の波によって農業から追い出されてしまう恐れがある、8日、国連食糧農業機関(FAO)がこんな警告を発した(Rise of supermarkets across Africa threatens small farmers)。

 途上国におけるグローバリゼーション・都市化と食料システムに関するFAOのワークショップで、ミシガン州立大学のトーマス・リアドン(Thomas Reardon)は、アフリカ東部・南部におけるスーパーマーケットの急速な増加は、多くの途上国の経済的バックボーンである食料システムを変革しつつあると語った。南アフリカ、ケニヤ、ジンバブエ、ザンビア、ナミビア、ボツワナ、スワジランドなどにおける生産物供給・流通の変化は、大量の小農民の生活に直接の影響を及ぼす。彼らがスーパーマーケットが望むものを供給できなければ、農業から放り出される恐れがあるという。

 彼によれば、中産階級のショッピング・ストアとしてのスーパーの伝統的イメージにもかかわらず、大規模店舗形態が都市中心j部だけでなく、アフリカ中の農村小都市にも広がっている。この5年から10年の間に、南部・東部アフリカの各地でスーパーの数が爆発的に増加した。ケニヤだけでも200のスーパーマーケットと10のハイパーマーケットがあり、その売上は9万の小商店の売上に匹敵、国の食料品小売の3分の1に達する。それは、既に、国内農民から、国の輸出の3倍の生産物を購入している。南アフリカでは、スーパーマーケットの食品売上が55%以上になっており、その影響は、単一の、拡大した市場に統合された地域の果実・野菜市場で感じられる。

 FAOの上級経済アナリストのStamoulisは、グローバリゼーションと都市化の力に駆り立てられる途上国にあけるスーパーの増加は不可避であると言う。国連の数字によれば、2000年には20億人が都市に住んでいたが、2030年には倍以上になると予想される。増加する都市居住者は伝統的市場よりもスーパーに依存することになろう。そして、途上国におけるスーパーの増加は急速である。彼は、グローバリゼーションと結合した急速な都市化と外国直接投資の流れにより、アフリカは先進国で見られた以上の食料供給システムの劇的な変化を経験することになる、アフリカ小農民は、自らを組織して新たな市場、信用・技術の要請に対応しなければ、農業を放棄するしかなくなるだろうと語る。

 FAOによれば、農民は、急速に変化する国内市場に積極的に参入するために、資源と訓練を必要としている。あり得る支援には次のものが含まれる。

 ・スーパーに供給するのに必要な規模と量に合わせるために、協同組合や有効な団体を組織することを助ける。

 ・厳格な品質・安全基準に合わせるために必要な技術を獲得するための信用(貸し付け)計画。

 ・農民が複雑な交渉に立ち向かう強力な立場に立つための知識の普及。

 彼は、スーパーの増大は、もし農民の参加が可能にされれば、小企業・小農民にとってのチャンスとも見るべきだと言う。

 「スーパーの猛攻撃は、農民を国内市場のためのスーパー品質基準に合わせるように駆り立てるから、国内で販売される食品の品質を安全性を改善するだろう」。また、国内で販売される生産物の品質の改善は国の輸出を容易にする。スーパーは、農民の生産物への安定し・頼りにできる市場を提供できるし、輸送や流通の職を供給することで都市と周辺地域の雇用を促進する可能性もある。さらに、都市住民のために食料の品質を改善し、価格も下げる。ただし、仕事が失われる可能性もあり、ネットな影響はケースにより変わるだろうと言う。

 彼は、「これは民間部門・非政府組織(NGO)・国際開発組織が協働する機会でもある」、「我々は変化を止めることはできないが、その形を作ることができる」言う。

 Stamoulisのこのような発言にもかかわらず、スーパーの食品市場支配は、先進国においても中小農民の脅威でありつづけている。最大の問題は、とめどもない価格競争である。これを抑止する強力な手段がなければ、品質や安全性という消費者・「都市住民」にとっての利益も脅かされる。これは既に先進国が得た教訓となっているが、事態はどれほど改善されただろうか。FAOの警告は歓迎すべきものかもしれないが、なすべきことはほかにもある。

農業情報研究所(WAPIC)

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