ケニア 砂漠化防止・貧困軽減のために導入された乾燥耐性外来樹で地域住民が大損害

農業情報研究所(WAPIC)

05.10.4

  ケニア・バリンゴ湖地域の住民が、砂漠化防止など非常に多目的に有用として導入された外来樹が地域の荒廃をもたらしていると政府に損害補償の訴え を起こそうとしている。ナイロビのThe East African Standard紙が10月4日付けで報じた。

 Villagers Threaten to Sue State Over Weed,The East African Standard,10.4
 http://www.eastandard.net/hm_news/news.php?articleid=29932

 メスキット(メスキート、学名Prosopis Juliflora)と呼ばれるこの樹木は乾燥に非常によく耐え 、家畜飼料、日よけ、防風、生垣、薪炭材、家屋建材などに使われる。その導入は、砂漠化防止、二酸化炭素吸による地球温暖化の抑制、砂漠化地域の生態系や微気象を含めた気候の安定、食料不安の軽減、農村住民の代替エネルギー源提供、ひいては貧困軽減にに役立つと期待されてきた。ケニア政府は、1984年頃、国連食糧農業機関(FAO)によるその地域への導入を許可したという。ところが、今やこれが至るところに繁茂、地域住民の生活を危機的状況に追い込んでいるのだという。

 この訴訟にかかわる弁護士によると、地域住民は、それが家や学校を占拠、放牧地や農地、そして家畜にも損害をもたらしている訴えている。さらに河川の堰きとめが洪水、住民の移住、運動場の喪失につながり、さらに蚊の繁殖地を生み出し、マラリア感染の増加ももたらしている。その大量繁茂は河川や灌漑水路のスムーズな流れを妨害、湖の水汲み場や魚場に近づくことも難しくしている。その鋭いトゲは、人々と家畜を傷つけている。道路や野山の人道も塞がれた。住民は、それが彼らの経済基盤を破壊し、極度の貧困を招いていると主張する。

 なんとも皮肉な話だ。バイテク企業・研究者・その肩をもつ政治家は、乾燥に耐える遺伝子組み換え(GM)作物の導入が干ばつと砂漠化に悩むアフリカの食糧安全保障と貧困軽減の決め手であるかのように喧伝している。この話は、それがもたらすかもしれない災厄への警鐘となるかもしれない。03年の国際科学評議会(ICSU)のGM食品・生物評価報告は、将来の「塩害耐性稲が、現在はマングローブの生息地として重要な地域に広がるかもしれない」と警告していた(国際科学評議会(ICSU)のGM食品・生物評価報告,03.7.7)。乾燥耐性作物は乾燥地の生態系と人々の生活をどう変えるのだろうか。メシキットの二の舞となる恐れも考えねばならないだろう。その手放しの礼賛はやめねばならない。

 この報告が言うように、「このような[GM技術の]応用のリスクと便益は、特定の農業生態系での特定の応用のケース・バイ・ケースによる環境影響評価の必要性を際立たせる」。

  関連情報
 Hailu Shiferaw,Prosopis juliflora:The Paradox of the Dryland Ecosystems, Afar Region,Ethiopia
 http://www.geocities.com/akababi/hailu1.htm