アフリカ・ギニアサバンナの4億fに商業農業の機が熟す 大規模集約農業には要注意

農業情報研究所(WAPIC)

09.6.26

  国連食糧農業機関(FAO)のニュースによると、”Awakening Africa’s Sleeping Giant - Prospects for Commercial Agriculture in the Guinea Savannah Zone and Beyond”と題するFAOと世界銀行が刊行した新たな研究が、25ヵ国にまたがって広がるアフリカのサバンナが、いくつかのアフリカ諸国を大量 生産商品作物の世界的生産国に押し上げる能力を持つと結論している。

 Africa’s sleeping giant,FAO,09.6.22
  http://www.fao.org/news/story/en/item/20964/icode/

  研究によると、西アフリカ・セネガルからアフリカ中央部、スーダン南部、ウガンダ、タンザニアを通り、南アフリカまで南下する6億ヘクタールのギニアサバンナ地帯には4億ヘクタールの農業適地があるが、現在作物が栽培されているのはその10分の1ほどでしかない。

 ここの農業条件も決して恵まれているわけではない。が、降水が不安定で、土壌は貧弱、人口稠密なタイ東北部、辺鄙で、土壌は酸性・有毒、人口は希薄なブラジル・セラードのような条件不利地域でも、マクロ経済政策、インフラ整備、強力な人的資本基盤、有能な政府行政、政治的安定性に支えられ、「歴代政府が農業成長の条件を創出した」。

 現在のアフリカは、農業変革が1980年に始動したときのタイ東北部やセラードに勝る急速な農業開発を達成する好位置にある。これには、多様で豊かな国内市場を提供する急速な経済・人口・都市の成長、多くの国におけるビジネス環境の改善、農業への外国・国内投資の増加、新技術の利用など、多くの根拠があるという。

 ただし、公平な開発と社会的紛争の回避を目指すならば、ブラジルで起きたような富裕な農業者が主導する大規模農業よりも、タイで起きたような小規模土地保有者が主導する農業変革の方が望ましいモデルとなる。マダガスカルの世銀農業エコノミストであるミカエル・モリス氏は、「アフリカの商業的農業は、成長を最大限にし、利益を広く拡散させるために、小規模保有者が参加することができるし、そうすべきだ」、「機械化された大規模生産は、一定の非常に特殊な状況の場合を除けば、明白なコスト上の利益がないし、社会的紛争につながる可能性が高い」と言う。

 タイとブラジルの経験では、小規模農民が開発に参加するとき、貧困が一層削減され、地方の需要も刺激された。

 ただし、低価格の基礎食料作物の場合には、1〜2ヘクタール以下の家族農業では、貧困から抜け出すために十分な収入を稼ぐことはできそうもない。従って、ギニアサバンナにおける商業的農業の開発は、基礎食料作物生産者に多角化の機会を提供しなければならないという。

 研究は、さらに、ギニアサバンナの農業利用は、不可避的に環境コストをもたらすことも発見した。モリス氏によると、「集約化を通しての農業の商業化は、環境的に脆いか価値の高い土地への農業の拡散を減速させることで、環境損傷を減らすことができる。しかし、集約化は、脆い生態系の破壊や肥料・農薬の過剰な使用を通して環境を損傷するリスクももたらす」。農業集約化が起きるとき、政府は環境影響を監視し、損傷を減らし、あるいは回避する措置を実行せねばならない。


 バイオ燃料原料や自国食料を生産するために今アフリカに殺到している海外農業投資は、間違いなくアメリカ型メガファームのアフリカへの導入に帰結するだろう。それは、多くの自給農民を追い出し、さらなる限界地や森林に追い込み、土地紛争を激化させるとともに、環境破壊を加速するだろう。

 もうひとつ、この研究は指摘していないようだが、忘れてはならないのは、今でも頻々と起きている農耕民と遊牧民の、ときには血で血を洗う紛争だ。サバンナの農業開発は、遊牧といかに共生するかを深く考慮したものでなければならない。気候変動による乾燥化で、アフリカの将来の食料安全保障の鍵を握るのは作物よりもずっと厳しい暑さと乾燥に耐えることができる家畜ではないかという研究も現れたばかりだ(アフリカ大陸  乾燥で2050年に可耕地半減も 灌漑よりも乾燥に耐える家畜が重要,09.6.4)。