農業情報研究所農業・農村・食料中東・アフリカニュース:2010年12月15日

アフリカの緑の革命 農業生物多様性がカギを握る 新たな国際研究

 大量の化学物質と水を投入した多収品種の単一作物栽培(モノカルチャー)はアジアに「緑の革命」(食料作物生産の飛躍的増大)をもたらしたが、環境の悪化も引き起こした。生態系の退化が進み、作物収量が低迷しているアフリカは、これらの技術を根本的に改めた持続可能な技術を緊急に必要としている。

 そう考えるマラウィ、アメリカ、カナダ、イギリスの研究者からなる国際研究チームが、マラウィでの10年に及ぶ大規模な試験を通して、アフリカの緑の革命のカギは農地における生物多様性にあることを確かめた。

 研究者は、マラウィの多数のトウモロコシ畑で、マメ科植物とのさまざまな輪作・間作・混作を試み、トウモロコシのモノカルチャーと比較した。肥料を少し増やすだけで、トウモロコシ収量はモノカルチャーの場合に比べて倍増した。半多年生(semiperennial)の低木マメ科植物との輪作は最も効果的で、肥料を半分に減らしてもトウモロコシの収量は減らず、収量の年々の変動が減り、トウモロコシの実の蛋白質含有量が70%も増えた。1年性マメ科植物では効果はもっと小さかった。

 この研究は、アフリカでは作物の多様化が一国規模で有効で、低木マメ科植物は環境と食料の安全保障を強めることができるという証拠を提供するものという。

 *Biodiversity can support a greener revolution in Africa,Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) ,22 November 2010.
  Abstract;http://www.pnas.org/content/early/2010/11/15/1007199107.abstract

 しかし、共同研究者の一人であるマラウィ大学のGeorge Kanyama-Phiriは、この技術はどこでも、誰でも利用できるわけではない、マメ科植物がもたらす利益は農業のタイミングの地方的差異によっても異なるし、マメ科植物の種子 が入手できない農民も多いと言う。

 Diversifying crops 'could green African agriculture',SciDev,12.14
 http://www.scidev.net/en/news/diversifying-crops-could-green-african-agriculture-.html

 なお、これは筆者がわが意を得たりと叫びたくなるような研究である。関連する筆者の主張は次を参照されたい。

 農業生物多様性の喪失と第二の「緑の革命」―農業生態系の変化こそ注意が必要だ[特集・生物多様性はなぜ大切か]  科学(岩波書店) 2010年10月号(VOL.80 NO.10) 1016−1021頁

 GM作物と「緑の革命」が奪う農業生物多様性 季刊地域(農文協) AUTAMN 2010 No.3 112−114頁