農業情報研究所農業・農村・食料>中東・アフリカニュース:2012年11月19日

サウジアラビア・エコノミスト 小麦生産撤退計画見直しを 小麦は経済性を超えた戦略商品

 サウジアラビアのトップ・エコノミストが11月17日、2016年までに国の小麦生産を全面停止、国が必要とする小麦は輸入するというサウジラビア政府の計画(麦自給の夢達成の砂漠国・サウジ 2016年まで小麦生産撤退 輸入国に,08.4.11)は、食料の輸入依存を創り出し、国の食料安全保障を脅かすと警告した。エコノミストは、小麦生産を制限するという決定を見直し、小麦生産継続のために水の配給と灌漑システムを考究することを政府に求めている。

 エコノミスト・Habib Allah Al-Turkustaniは、小麦は戦略商品で、経済性だけで切り捨てるわけにはいかない重要性を持つと言う。だからこそ、大抵の国は基礎食料の国内生産を増やし、食料安全保障を達成しようとしている。政府は、小麦の代わりにバーシーム(エジプトクローバー)の生産を制限するべきだった。同じ量を生産するのに、バーシームは小麦の5倍の水を必要とする。小麦は、雨が降る可能性のある4ヵ月だけで収穫でき、灌漑の必要性も減る。

 氏は、「1ヘクタールのバーシームは3万5000㎥の水を必要とする。小麦の場合には7000㎥で済む。干ばつは世界全体の生産量に影響を与え、必要な量の小麦を確保できなくなる恐れがある。輸入小麦に依存する一部の国は過去2年、必要量確保の困難に直面した」と、サウジアラビアの地下水を研究するように政府に要請する。

 サウジ経済協会のEsam Khalifaもエコノミスに同調する。彼によると、国は現在190万トンの小麦を輸入、100万トンを国内生産しており、この国内生産は年に12.5%の割合で減っていく。200万トンの輸入には25億サウジリヤルかかる。この費用は年に5%ずつ増加、2016年には40億サウジリヤルに達するだろう。消費する水の配給で大量の水が節約できる。洗車の水を配給制にし、農業と工業で排水処理水の利用を増やし、バーシームのような大量の水を要する作物を減らし、ダムに集まる雨水を活用するなど、いくつかの節水方法はある。水節約灌漑システムの使用も探るべきである。

 エコノミストは、70年代、80年代には400万トンもの小麦を生産していたサウジアラビアのような小麦生産国がなぜ小麦を輸入するのか理解できない、「1リットルの牛乳を生産するには4−5リットルの水が必要だ」と言う。

 Economists call for reassessment of Kingdom’s wheat production,Arab News,12.11.18