米国農務省(USDA)、ウシゲノム解析プロジェクト始動を発表

農業情報研究所(WAPIC)

03.12.16

 米国農務省(USDA)は12日、5千300万ドルのウシゲノム解析プロジェクトを発足させると発表した(VENEMAN ANNOUNCES BOVINE GENOME SEQUENCING PROJECT NIH To Lead International Effort)。国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)、USDA、テキサス州、ゲノムカナダ、オーストラリア英連邦科学産業研究所、ニュージーランドの三つの民間企業(Agritech Investments Ltd、Daily Insight Inc、AgResearch Ltd.)が共同出資する。

 ベナマン農務長官は、このプロジェクトは官民連携の優れた例であり、「ウシゲノム解析は、人間の健康と農業の利益となる画期的躍進のための基礎研究を確立する重要な第一歩だ。飢餓撲滅、栄養改善、農業の環境への影響の削減がこの研究から得られる可能性があるすべての成果だ」と語っている。

 報道発表によれば、ウシゲノムのサイズはヒトやその他の哺乳動物のゲノムと類似で、30億塩基対ほどのサイズと推定される。増加しつつある解析された動物ゲノムのリストにウシ(Bos taurus)のゲノムが加われば、乳・肉製品の改良や食品安全の強化に加え、研究者がヒトゲノムについての知見を増やすことも助けるだろうという。

 ゲノムカナダの会長・CEOのマーチン・ゴッドブート博士は、「カナダのたった一頭の牛にかかわる”狂牛病”の最近の発生は、牛産業の問題が一国の経済にどれほど深い影響を与えるか、別の類似の状況を回避することがいかに重要かをはっきり示した。この産業に突きつけられた難題を克服することを助ける基礎科学への投資は国際社会にとって重要だ」と述べる。

 同日の記者会見で、ベナマン長官は、ウシゲノム解析は鶏・蜜蜂・豚を含む動物ゲノムの理解を広げる多くのプロジェクトのなかの一つにすぎない」、「この6月、USDAがサクラメントでの農業科学技術閣僚会合を主催したとき、・・・私はゲノミックスが将来の進歩のための最も有望な分野だと確認した」と述べている(Transcript of Remarks by Ann M. Veneman, Secretary of Agriculture At the kick-off of the Bovine Genome Sequencing Project Washington, DC - December 12, 2003)。サクラメント会合は、途上国、特にアフリカ諸国に遺伝子組み換え(GM)作物・食品を売り込むことを最大の目的に開かれたものだ。

 基礎研究は重要かもしれないが、この分では性急に応用が追求され、牛の遺伝子操作に拍車がかかる恐れがある。それが牛と人と環境に悲惨な結末をもたらさないように、応用はくれぐれも慎重であって欲しい。

農業情報研究所(WAPIC)

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