工業畜産とヤトロファ栽培が世界の隅々に 英国企業等がカンボジア投資に関心

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.19

   英国・ヨークシャーの世界的に名を知られる豚繁殖・改良会社のAMACが、カンボジアは工業的規模の養豚に有利な条件を提供すると、カンボジアのMong Reththy Groupとの提携に関心を示したそうである。また、Mong Reththy Groupは、外国企業はカンボジアでの養豚と[バイオディーゼルの原料となる]ヤトロファの栽培に熱心なように見える、会社は共同する用意があると語ったという。

 British investors interested in pig rearing, bio-fuel in Cambodia,PNA,9.18

 かくて、工業畜産とバイオ燃料熱に浮かされたヤトロファ栽培が世界の隅々にまで広がるわけだ。

 国連食糧農業機関(FAO) は17日、工業化に向かって劇的な変化を遂げつつある世界の動物性食料生産は動物から人間への病気伝達のリスクを高める恐れがあると警告を発したばかりだ。”工業的畜産と世界の健康リスク”と題する研究報告(Industrial Livestock Production and Global Health Risks)を受けて発せられたこの警告は、「動物から人間への病気伝達のリスクは、人間と家畜の数の増加、家畜生産の劇的変化、世界規模の農産食料ネットワークの出現、人々と物の移動性の大きな増加のために、将来、増加するだろう」、「大規模な工業的生産単位への家畜の過度の集中を避け、公衆衛生を護るためのバイオセキュリティの強化と病気モニタリングの改善に適切な投資がなされるべきだ」と言う。 

 Dramatic changes in global meat production could increase risk of diseases,FAO,07.9.17
 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2007/1000660/index.html

 それによると、人々が豊かになり、また人口が増えたために、肉やその他の家畜製品に対するル需要が大きく増加してきた。増加する需要を満たすために、しばしば都市中心に近い場所での家畜の生産と密度が大きく増加してきた。工業的畜産は一層集中するようになり、数少ない一層生産的な家畜品種を使うようになった。このような発展は、今までのところは政策決定者に広く認められることがなかった地方と世界の病気のリスクに深刻な帰結をもたらす可能性がある 。

 養豚と養鶏は最も急速に成長し、工業化が進んでいる。その結果、先進国では、巨大な数の鶏や七面鳥が1万5000羽から5万羽を囲い込む”工場”内で生産されている。家畜生産の工業化への傾向は途上国でも見られ、特にアジア、南米、アフリカの一部で伝統的システムが集約的単位に置き換えられつつある。

 そして、工業的養豚・養鶏は生きた動物の大量の移動に依存している。例えば2005年、1ヵ月に200万頭以上、年に2500万頭の豚が国際的に取引された。このような移動と密閉された数千もの動物の集中が病原体移転の可能性を高める。さらに、密閉された動物工場は、大量の病原体を含む可能性のある大量の廃棄物を生み出す。これら廃棄物はいかなる処理も受けることなく、土地に撒かれ、野生哺乳動物・鳥の感染リスクを生み出す。

 高病原性H5N1ウィルスが現在の世界の主要な関心となっているが、鳥や豚におけるインフルエンザAウィルス(IAVs)の”静かな”伝播も国際的に緊密にモニターされるべきである。IAVsは、商業的に飼育される鶏の中に相当に広く広がっており、程度はもっと低いが豚にも広がっている。それが人間のインフルエンザ・パンデミックにつながる可能性もある。

 カンボジアもまた、工業畜産がもたらすこのような脅威に怯えることになるのだろう。

 同様に、バイオ燃料ブームのお陰で、世界の隅々までがヤトロファに覆われることになる。需給が逼迫する食料の生産用地がますます細る。

 スイスのBioenergy Internationalはケニアに9万3000fのヤトロファ・プランテーションを立ち上げ、英国のSun Biofuelsは、タンザニアにヤトロファ生産のための1万8000fの最高級農地を取得した(国際慈善団体 バイオ燃料を攻撃 小農民の土地を強奪 植民地拡張時代を偲ばせる,07.7.2)。英国のBP(ブリティッシュ石油)は食品企業・D1 Oilesと組み、D1がインド、南ア、東南アジアに持つプランテーションでのヤトロファ栽培に投資する。さらに、インドネシアでもヤトロファ、ソルガム、サトウキビを原料とするバイオ燃料工場の設立の可能性を探る。スウェーデンのScanoilも、ヤトロファを栽培できる土地をインドネシアで物色中だ。インド政府、フィリピン政府も、巨大面積でヤトロファを栽培するバイオディーゼル増産計画を持つ。