OECD幹部 ”バイオ燃料で農産物価格高騰”は単純すぎる 天候異変と食料需要の増大が主因

農業情報研究所(WAPIC)

08.1.16

  OECDのLoek Boonekamp農産食料貿易・市場部長がロイター・グローバル農業・バイオ燃料サミットで、現在の世界的農産物価格高騰をバイオ燃料のせいにする風潮に警告を発している。

 現在の農産物価格高騰の主因は主要生産国の天候異変のための供給の急減、タイトな世界在庫、途上国の食料需要増大である。主要穀物生産国(米国、カナダ、オーストラリア、EU)における供給不足は6000万トンに達し、バイオ燃料用需要の増大の4倍にもなる。価格高騰の原因をバイオ燃料のせいにするのは単純すぎるという。

 Reuters Summit-Biofuel impact on farm prices overplayed,The Guardian,1.14
 
http://www.guardian.co.uk/feedarticle?id=7223812

 食料と競合するバイオ燃料の拡大を抑えたところで、食料価格を高騰させ、また食料不足さえ招くかもしれない基本的要因は消えないことに心したい。

 なお、干ばつや悪天候による供給不足を緩和するためのEUの強制減反廃止(EU 穀物価格高騰に対処する強制減反停止を正式決定 輸入関税停止も提案,07.9.27)も大した供給増加につながりそうもない。フィナンシャル・タイムズ紙によると、10%減反廃止にもかかわらず、EU最大の生産国・フランスの春まき作物の作付は1.2%増えるだけ、ドイツでも1.9%増えるだけだ。小麦が増える分、菜種が減るだけで、耕作総面積はほとんど増えない。

 減反廃止の決定が遅すぎたことに加え、休耕地はもともと生産力が低く、肥料価格が歴史的な高さに達しているために、農家の増産意欲が挫かれているという。

 Europe rule change fails to lift harvest,FT.com,1.14

  世界穀物需給緩和への期待も縮むばかりだ。