農業情報研究所農業・農村・食料農業・食料一般、農業科学・技術・農法>ニュース:2010年8月10日

気候変動−夜間気温上昇でアジアの米生産成長が減速―現実の農家データに基づく米国の新研究

 一日の最高気温、最低気温、太陽放射がコメの収量に与える影響を、熱帯・亜熱帯アジアの灌漑稲作農家の水田から得られたデータを基に分析した研究が全米科学アカデミーのプロシーディング誌最新号(8月9日)に発表された。気候変動がコメの収量に与える影響に関する研究は数多いが、それらは設定された実験的環境の下で得られるデータを基にしており、現実世界の条件を反映する、実際に農民が管理する水田から得られたデータに基づく研究は初めてではないかという。しかも、これらは、世界の米の90%以上を生産する6ヵ国―中国、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム―の227の水田の6年間にわたるデータであるという。分析結果は、将来の世界の米生産がどうなるかを直接示すことになる。

 この分析は、一日の最低気温の上昇、従って夜間気温の上昇とともに収量が低下することを示した。最高気温の上昇は収量を引き上げるが、夜間気温の方が速く上昇するから、実際には夜間気温上昇による収量損失の方が大きくなりそうだという。予想される気温上昇はアジアの(従って世界の)米生産の増加を減速させる。過去25年の気温上昇は、いくつかの場所では、収量成長率を既に10−20%落としているという。

 Rice yields in tropical/subtropical Asia exhibit large but opposing sensitivities to minimum and maximum temperatures,PNAS,10.8.9
 Abstract:http://www.pnas.org/content/early/2010/07/26/1001222107.abstract?sid=a9a9f468-e7e3-422d-bc3c-e78817b28e71

 Supporting Information:http://www.pnas.org/content/suppl/2010/07/27/1001222107.DCSupplemental/pnas.201001222SI.pdf