米国最大級の鶏肉企業、養鶏場廃棄物の肥料利用でバージニア農家と契約交渉

農業情報研究所(WAPIC)

05.8.22

 米国最大の鶏肉生産者の一つであるPerdue社がバージニアの穀物農家と、その養鶏場廃棄物(チキンリッター)を肥料として使う協定を結ぼうとしている。もし合意がなれば、農家が使う一袋ごとにリベートが払われ、収穫物を同社に販売すれば、さらに1ブッシェルあたり5セントを追加するという。Virginian-Pilotを情報源に、worldgrain.comが伝えている(worldgrain.com,8.19;http://www.world-grain.com/newsfinder.asp?Action=UserDisplayFullDocument&orgId=586&docId=l:303960949&topicId=14429&start=1&topics=single)。

 チキンリッターを低温殺菌して顆粒肥料に変えるデラウェアの同社の工場は、年8万トンの生産能力を持ち、今年はおよそ6万トンを生産する。新製品は収量を増やし、土壌の水分・栄養分保持能力を強化することが証明されており、有機農業用にも承認されたという。

 同社はまた、鶏の体重を急速に増やす外皮の少ない大麦の鶏給餌試験で、既にバージニア農家とのコネを持っているという。試験は結論を得るに至っていないが、同社の栄養学者からの悪影響の報告はない、この冬一層の研究が行われ、この選択肢の追求を続ける。

 この大麦は、トウモロコシ以上のエタノールを生産する可能性もあるとも考えられて、チキンリッターを燃料とするエタノール工場の話も出ているという。いいことづくめだ。

 しかし、チキンリッターの肥料としての大量散布がもたら河川の汚染の問題はどうなるのだろう。

 折りしも、Arkansas Democrat-Gazette紙は18日、アーカンサスで操業する8つの養鶏企業の代表者と、これら企業をアーカンサスからオクラホマに流れる河川の汚染 の元凶と告発するオクラホマの検事総長・ドルー・エドモンソンの17日の協議が何の合意にも達しなかったと報じた。エドモンソン氏は、6月7−9日の企業代表者との会合の後、6月13日に連邦の裁判に訴えたのだという(Talks in Oklahoma continue over litter)。

 多数の農民が鶏小屋を掃除したあと、そこから出る廃棄物を肥料として利用している。植物が吸収し切れなかった廃棄物からの燐酸が河川に流れ込み、藻の成長を促している。オクラホマは2002年、イリノイ川を含む6つの風光明媚な河川の燐酸許容値を設けた。6つの河川のうちの4つの上流がアーカンサスにある。アーカンサス当局は、燐酸が1リットルあたり0.037mgというオクラホマの目標は達成不可能と言っているという。

 あまりに大規模化した養鶏産業は、解決不能な環境問題を生み出している。チキンリッターと言えば、BSE特定危険部位入りの飼料も含む。BSE感染物質も環境中にばら撒かれる恐れがある。Perdue社とバージニアの穀物農家は、このような懸念を歯牙にもかけないのだろうか。

 関連情報
 工場畜産環境汚染抑制に壁、規制緩める米国,03.6.18