ヨーロッパの養蜂産業は10年足らずで壊滅 蜜蜂が集約農業・農薬の犠牲

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.28

 ロイターの最新報道によると、ヨーロッパの養蜂産業は10年足らずの間に壊滅する。蜜蜂が病気、殺虫剤、集約農業の犠牲になっているからだ。国際養蜂団体のApimondiaのGilles Ratia会長が27日、ロイターに対し、「このレベルの死亡率では、ヨーロッパの養蜂家は、あと8年から10年しか生き残れない」、「我々はフランス南西部で長年重大問題を抱えてきたが、今ではイタリアやドイツでも重大問題になっている」と語ったそうである。

 Death knell sounds for Europe's beekeepers ,Reuters,4.27
 http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSLR92146

 Apimondiaの数字によると、昨年、ヨーロッパの1360万の巣箱(蜜蜂群)のおよそ30%が死んだ。このロスは、スロベニアでは50%、ドイツ南西部では80%にも達した。会長によると、ヨーロッパの食料作物の35%は蜜蜂の授粉に頼っており、これは農家にとっての重大な脅威になる。

 北イタリアのピエモントに1000の巣箱を持つFrancesco Panellaは、「これは完璧な危機だ。去年、生産の半分を失った。これでは、あと2年か3年しか生き残れない。息子もこの商売を続けられないだろう」と言う。

 蜜蜂の最近の減少はミステリーに包まれているが、大部分の養蜂家は近代的農業と、ヒマワリ、トウモロコシ、ナタネなどの作物に使われる強力な新しい農薬のせいだと言っている。

 Apimondiaの科学コーディネーターであるGerard Arnoldは、殺虫剤と蜜蜂に寄生する
ヘギイタダニが蜜蜂群減少の二大要因だと言う。これで一旦弱くなった蜂群は、ウィルスやその他の病気で大量死することになる。

 フランス養蜂連盟のHenri Clement会長は、フランスの蜂蜜生産は、集約的ヒマワリ農業地域で被害を受けてきたが、山地や栗林ではしっかりと残っている、これこそ農業の影響の証拠だと言う。
 
 養蜂家たちは、ヨーロッパが1年に消費する34万トンの蜂蜜の58%も供給する産業が、どうしてこうまで無視されるのかと困惑する。Apimondiaの会長によれば、政治家は農薬を生産する巨大化学企業のロビー活動に弱いからだ。養蜂家がどんなに話しかけても、耳を傾ける者は少ないと言う。
 


 日本の政治家や役人はもっと能天気だ。国内中・世界中からかき集めれば、まだ何とかなると思っている。

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