バングラデシュ:エビ養殖のために土地無し家族追い立て―営利主義がもたらす人権侵害

 農業情報研究所(WAPIC)

03.12.20

 略奪者追い出しに貢献した土地無し家族が、エビ養殖で大儲けを企む有力者への土地引渡しで追い立てられようとしている。”ワンワールド・ネット”からの報告を紹介する(Bangladesh Picks Shrimp over Rice, but Landless May Get Neither,OneWorld.net,12.18

 バングラデシュ南西部の4万ほどの土地無しが、先週、悪名高い森林賊を追い出すことことで地域を清掃したのち、ノアカリ沿岸のエビ養殖農家に道を開くために彼らをすぐに立ち退かせようとする政府と角突き合わせた。

 13日土曜日、政府は、エビ養殖民に土地を渡すために、ノアカリ地区の1万2,000エーカーの砂洲区域の「違法占拠者」を確認、追い立てるための委員会を作った。

 しかし、15日、彼らは、向こう2週間、彼らを追い出してはならないという高等裁判所の政府に対する指示で、一時的な救済を得た。裁判所は、砂洲をエビ養殖区域と宣言する政府決定の合法性にも挑戦、区域が何故土地無しに配分できないか説明せよと政府に求めた。

 訴えた非政府組織は、「5月5日、土地省はこの砂洲をエビ養殖区域と宣言した。だが、90年の土地管理マニュアル、そしてエビ養殖ガイドラインは土地無しがこのような計画で優先されるべきだと述べている」と言う。

 それは、地域の紛争、不穏の引き金となった政府決定に反対、1万3,000の土地無し家族の少なくとも4万人の保護を求めた。

 このNGOは、バングラデシュ環境法律家協会(BELA)からの法的支援を受けて提訴した。

 自生森林が長く延びる12の砂洲に広がる地域の総人口はおよそ10万である。大部分は政府所有地での農業か、農場労働者としての仕事で生活している。

 ノアカリ砂洲区域に関する省庁間委員会のアドバイザーである議会バングラデシュ国民党(BNP)の一メンバーは、「政府は、土地の最善の利用を確保するために、エビ養殖と農業のための土地の潜在力を評価することを決定した」と言う。

 しかし、彼によれば、政府は、エビ養殖の商業的利益の方が高いために、既に心を決めているように見える。「米栽培ではエーカー当たり50ドルしか稼げないが、エビでは650ドルも稼げるから、エビ養殖が地域住民のためになる」。また、地域の悪党を掃討したのちに貸し出すための何らかの土地があったということは否定、人々は長年の間悪党の犠牲になってきて、我慢も限界に達したのだという。「今までに、悪党は少なくとも200人を殺し、2000人の婦人を強姦した」。

 皮肉にも、彼らの将来が定まらないが、賊に対する最近の戦いに勝ったのは、彼らの力があったからだ。ノアカリの警察は、「たった400人の警官では、住民の参加なくしてこのような辺鄙な場所の賊と戦いを始めるのは不可能だ」と言う。

 掃討作戦に参加した一土地無しは、「有力者は、これら悪党が砂洲を占領、養殖場を作るのを助けている」と言う。地方公官もこれを認め、「彼らは、土地を占拠するために賊を利用しており、養殖場維持のためのカネと武器を与えてきた」と言う。

 地方住民は悪魔と深海の狭間に捕らえられている。過去8年、彼らは賊に脅迫されてきた。黙殺してきた警察の目を向けさせた。だが、事態は少しも好転しない。

 地方ジャーナリストは、砂洲の人々は賊によって言葉では言いようもない苦悩を味わってきた。今また、有力者に土地を完全に取り上げられる恐怖に慄いている」。

農業情報研究所(WAPIC)

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