中国農業部、夏穀物生産増加の見通し 今年は穀物生産回復のカギを握る年

農業情報研究所(WAPIC)

04.6.8

 China Daily紙の報道によると(*)、中国農業部(農業省)が7日、夏穀物生産が4年ぶりに増加する見通しと発表した。中国の輸入が今年は大きく増えるという市場予測は当たらないだろう、04年は中国の穀物生産と需給関係の回復のカギを握る年となるかもしれないという。

 小麦作付面積の若干の減少にもかかわらず、好天と政策支援のおかげで、収穫量は3%増えると予想される。小麦は夏に収穫される作物の90%近く、中国の穀物総生産の4分の1を占める。農業部のリモートセンシング応用センターのサーベイに基づき、ヘクタール当たり収量は、昨年よりも、少なくとも150s多く、夏小麦生産は250万トンになると予想する。ただし、今年の夏穀物全体の生産予測については、発表がない。

 政府シンクタンクの専門家は、生産増加の予想により、中国が大量の小麦を輸入するだろうという予想は当たりそうもなくなったと言う。米国農務省は最近の農産物世界需給見通しで、中国の小麦輸入は、6月1日に始まる小麦販売年度に800万トンになると予想した。しかし、中国は小麦在庫を需給調整のために使ってきたので、小麦輸入は直接消費よりも在庫更新に使われる。国内小麦価格は世界価格よりも40%低い。価格予測と小麦生産増加の見通しは、中国が大量に輸入するという一部輸出国の予想が当たりそうもないことを意味すると言う。

 過去何年か、中国の多くのパン製造者や製粉業者はパンなどのための高級小麦を輸入してきたが、シナリオは変わった。中国は昨年、933万haを特別な最高品質の小麦品種の栽培に当てた。これは前年より12.5%多かった。さらに6日、国の小麦生産面積の半分に当たる1,000万haの小麦を収穫するために、記録的な数のコンバインを送った。補助金や農業税削減を含む一連の政策が小麦生産者を刺激した。また、農業技術普及センター所長は、病害虫抑制の努力の飛躍的強化も生産増加を助けたと言う。中央・地方の様々なレベルの政府が、小麦の病害虫防除のために、およそ1,200万ドルを支出した。

 農業部は、夏の収穫の大幅増加により、今年の穀物生産は4億5,500万トンに達し、04年は、穀物生産の回復と供給が需要に追いつかない需給関係を覆すためのカギを握る年になると見る。中国の小麦・トウモロコシ・米・その他食糧穀物の生産は、96年に5億1,200万トンの記録を達成した後、年々減少、03年には4億3,500万トンまで落ち込んだ。ただ、専門家は、現状を楽観的に見る理由はない、年間を通じての穀物生産は多様な要因で決まるから、年間全体についてはバラ色の見通しを立てるには早すぎると言う。

 なお、この発表の前、国家穀物・石油センターが冬小麦生産は昨年より1%減少、8,000万dになるとする予測を発表している(**)。それによれば、平均収量は4,100s/haで、昨年より4%上昇し、収穫期の天候により、もっと増えるかもしれない。しかし、8,200−8,300万dに達したとしても、今年の小麦の全生産量は8,649万dで、需給には大きなギャップが残るという。

 また、米については、中国政府の公式統計に基づき、今年の生産は昨年より12%増加、今年は1億7,980万dに達すると報じられている。作付面積が昨年より10%増えた。政府が出した価格見通しが作付増加の主要な要因という。今年の最低買い入れ価格はトン当たり1,400−1,500元とされている。

* Summer grain output to rise after years,China Daily,6.8
**CHINA'S WINTER WHEAT OUTPUT EXPECTED TO HIT 80 MLN TONS,
World-Grain.com(from Asia Pulse),04.6.7.
***Rice output expected to grow 12%,
World-Grain.com(from XINHUA NEWS AGENCY),04.6.7.

 農業情報研究所(WAPIC)

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