化学肥料過剰使用と樹木伐採で失われる中国穀倉地帯土壌ー中国専門家が警告

農業情報研究所(WAPIC)

07.8.28

  中国新華網の報道によると、中国科学院(CAS)の土壌学専門家が、土壌の浸食と退化のために北東部の中国穀倉地帯が肥沃な土地を失いつつあり、国の食料安全保障が危機に曝されると警告している。以前のチャイナ・デーリー紙の報道(中国黒竜江省 過剰開発による浸食で黒土を急速に喪失 穀物栽培地は孫世代に残らない,05.9.26)と類似の報道だが、中国のみならず、将来の世界食料需給、あるいは食料安全保障にも大きく影響する重要な事実だから、重複をいとわず紹介しておく。 

 Scientists sound alarm as black soil erodes in NE China,xinhua,8.27
 http://news.xinhuanet.com/english/2007-08/27/content_6612215.htm 

 浸食と退化が進むのは、黒竜江、遼寧、吉林の3省と内蒙古自治区に広がる3,500万fの黒土だ。この地域で国の穀物の30%が生産されている。ところが、CAS傘下の地理学・農地生態学北東研究所の研究によると、この土壌の厚みがこの60年で80cmから30cmに激減した。土壌中の有機物濃度も1940年代の12%から2%にまで減り、85%の土壌が養分不足になっている。

 農業過剰開発、化学肥料の過剰使用、止まらない樹木伐採が引き起こすこの土壌浸食は、既に地方の生態系に悪影響を与え、干ばつ、洪水、砂嵐をますます頻発させている。黒竜江省は10年連続で春の干ばつに見舞われている。土壌は砂埃となって飛び去り、河川や湖沼の沈砂となり、川床を上げて洪水のリスクを高めている。

 先週、国家発展改革委員会(NDRC)は北東部諸省の再活性化を目指す計画を発表したが、黒土の保護はその重要な一環を構成している。NDRC副部長は、”土壌保護は耕地拡張のために一層多くの木を切らねばならないということではない。必要なことは灌漑施設を強化し、低収量耕地を肥沃な土地に変えることだ”と言う。

 研究者は、土壌水分を取り戻すために一層の池や貯水池が必要で、土壌を安定させるために森林帯の設置も必要だと言う。また、養分を増加させるために厩肥やトウモロコシの茎を土に戻すことも勧奨している。中国北東部では、厩肥やトウモロコシの茎のような天然肥料が、毎年1億トンも生産される。これを有効に使えば、5年から10年で、500万fの低収量地を肥沃な土地に変えることができるという。

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 しかし、中国でも日本でも、このよう農業廃物は大量に焼き払われて大気を汚染、地球温暖化にも貢献している。将来は全部バイオ燃料にされ、農地に戻される廃物は皆無となるだろう。それは燃やしても食料はないから食料とのとj競合は起きないという理由で。それが将来の食料生産を危うくする可能性など、少なくとも日本では誰も考えていない。