ベトナム 米輸出契約を来年まで停止 自然災害・虫害で国内食料安全保障を優先

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.11

 ベトナム政府が米輸出契約を来年まで結ばないと決定した。国内食料安全保障のためで、この決定は先週、世界米価格がトンあたり325ドルまで上がったときに行われたという。今年、今までの輸出量は2007年の目標である400万トン近くに達し、なお100万トン在庫はあるが、これでは1年分の安全が保障されるだけという。

 農業・農村開発省は、最近の自然災害やトビイロウンカ虫害で今年の米生産がひどく減少することを恐れている。最近の嵐で6万haの水田が損害を受けた。米生産は前年同期に比べて20万トン減っている。

 ベトナムはタイに次ぐ世界第二の米輸出国で、今年は最初の8ヵ月で360万トン近くを輸出した。2006年の総輸出の60%はフィリピン、マレーシア、キューバに向けたものだったという。

 Rice export contracts barred until 2008,Viet Nam News,9.10

 世界中で米消費が減っているのは日本、中国、韓国などの東アジア諸国だけだ。インド等南アジアや東南アジアでは、一人当たり消費の減少傾向は見られず、人口増加は続いているから、消費量は増え続けている。アジア以外でも、キューバ、ブラジルなど中南米諸国やアフリカ諸国の消費も増えている

 ところが、世界の米収穫面積は最大の生産国・インドと第二の生産国・中国での減少主な要因として、99年をピークに減少に転じている。両国とも土地と水の制約や有利な換金作物への転換などから、この減少傾向が大きく反転することは考えられない。単収も90年代半ば以降は低迷したままだ。01年以来、連年、消費量が生産量を上回る状態が続いている。

 そうしたなかで、一旦自給を達成したインドネシアのような大消費国も、森林破壊も一因をなす干ばつ等の頻発で再び輸入国に転落しようとしている。バングラデシュ、ネパールなども稲ばかりか水田そのものも失う大洪水に見舞われている。大輸出国に躍進したベトナムさえも、安心していられない。ベトナムは昨年秋にも米輸出停止に追い込まれている(ベトナム 自然災害と病虫害で米輸出停止 アジア・世界の米の将来に暗雲,06.11.15)。

 米余りの日本といえども、バイオ燃料イネ・イネ・プロジェクトや花粉症緩和米にうつつを抜かしている場合なのだろうか。

 参照:主要穀物と大豆の国際価格の推移