大量の農民と食料安全保障がパームオイル拡大の犠牲 インドネシア農民同盟

農業情報研究所(WAPIC)

08.1.7

 ジャカルタ・ポスト紙が伝えるところによると、インドネシア農民同盟が今月2日、農民の生計や食料安全保障を危うくする政府のパームオイル・プランテーション拡大政策を批判した。

 Farmers suffer from booming palm oil,The Jakarta Post,08.1.4

  かねて”バイオ燃料”を”アグロ燃料”と呼び、政府の植物由来燃料開発戦略を批判してきたヘンリィ・サラギ同盟会長(世界の多数の団体がEUのバイオ燃料突進のモラトリアムを要請,07.6.28)が語るところは次のとおりだ。

 パームオイル産業は、世界、特にインドと中国の需要の増大からくるパームオイル価格の上昇(CPO(パームオイル粗油)先物相場(マレーシア:BMD:期近)の推移)から利益を刈り取ろうと、プランテーションを攻撃的に拡大してきた。農業省の2006年の記録によると、パームオイル・プランテーションが占拠する土地は、1998年の270万fから2006年の610万fへと、この10年足らずで倍以上に増えた。これらの土地の57%はPT Astra Argo Lestari PT SMARTなどの大企業が支配、政府と小規模民間生産者が43%を所有している。

 プラーテーションの規模拡大に連れて、大規模食料生産農民の数が減少、多くの農民が小規模生産者か、農場労働者にまでなってきた。平均0.3fを耕作する小規模農民と農場労働者の家族(世帯)は、1993年の1990万から2003年には2440万に増えた。2007年のデータでは、国の貧困層は16.58%を占めるが、その63.52%は、大部分が小規模農民、あるいは農場労働者として働く村人たちである。

 化石燃料をバイオ燃料に置き換える世界的キャンペーンのために、食料作物地のプランテーションへの転換は、今後、速度を速めると予想される。

 「食料作物農民は、パームオイル産業が儲かり、政府もプランテーション拡大を助ける諸施策を打ち出すから、今後も苦しいときが続く」。2007年に政府が承認した投資法と2002年の農業省布告により、最大10万fまでの土地の95年間にわたる使用が承認されることになった。以前の規制では最大2万f、35年しか認められなかった。

 大規模生産者による土地乗っ取りは農民所得と国内食料安全保障を損なう。「政府は、国は2005年には国内米需要を満たすことができると約束したが、実際には米を輸入せねばならず、その量も増加している」。2007年、インドネシアは150万トンの米を輸入、2006年の84万トンから78%も増えた。 外米は安いから、米輸入は国内米価に影響を与えてきた。その結果、農民は競争のために価格を引き下げねばならず、損失を蒙っている。

 サラギ会長は、農民福祉の改善のために、食料作物地の転換をやめ、米輸入政策を変えねばならないと主張する。