中国菜種生産 大雪でも昨年並み 油料種子生産テコ入れで市場・価格が安定?

農業情報研究所(WAPIC)

08.2.21

  1月半ばに始まった大雪や最近の低温で、中国326万fの菜種が被害を受けた。40万8,000fは収穫皆無と予想される。しかし、国家発展改革委員会(NDRC)によると、今年の菜種生産は2007年とほぼ同じレベルにとどまる。

 この冬の菜種作付面積は70万f増え、春にはさらに13万3,000fが追加される。これにより、菜種150万トン、菜種油にして7万トンの増産が期待される。大雪被害にもかかわらず、昨年並みの菜種生産は維持できるということだ。

 この増産は、油料種子の自給率を上げるために、国が菜種作付けを支援する一連の政策を導入したことによる(中国政府 大豆等増産に本腰 面積拡大・単収増加・改良品種普及促進措置,07.9.24)。大豆については、内蒙古自治区や黒竜江、吉林、遼 寧で67万fから267万fへの拡大計画がある。菜種についても、主要生産地域の揚子江デルタでの作付けに補助金が与えられる。農業保険も実験ベースの油料作物栽培をカバーするように拡張され、科学・技術研究も強化される。

 こうして国内油料種子生産が拡大、市場を価格を安定させると期待されるという。

 しかし、中国は2007年の最初の11ヵ月に14万7,000トンの食用植物油を輸出した。これは年に67%の減少を意味する。他方、輸入は28.5%増加、772万3,000トンになった。菜種油輸出は84.8%減り、輸入は7.6%増えたということだ。

 NDRC: Rapeseed output to remain stable,China Daily,2.20
 http://www.chinadaily.com.cn/bizchina/2008-02/20/content_6469335.htm

 国内増産にかかわらず、まして災害が頻発すれば、輸入の一層の拡大なしに市場と価格を安定させるのは不可能なことははっきりしている。それが国際価格の急騰に拍車をかける。

 しかし、国家糧食局科学研究院の丁声俊研究員によると、「中国では大豆の油用・食用消費量が急増する一方で、国内大豆の生産量は減少しているため、供給が不足し、輸入でバランスを回復する必要が生じている」とはいえ、「輸入大豆の大部分は合弁食用油加工会社で原料に使用され、そうして生産された食用油の一部はまた海外市場に輸出されている」から、中国が国際価格急騰の元凶とは言えないということである。

 国際穀物価格の高騰は中国が原因か?(3) 人民網日本語版 2.18
 http://j.peopledaily.com.cn/2008/02/18/jp20080218_83993.html

 ちなみに、米国農務省(USDA)の最新推計では、中国の油料種子生産、植物油の消費・輸入動向は次のとおりだ。油料種子生産が低迷するなかで、植物油の消費は年々100万トンほどのペースで伸びている。それに応じて輸入も急増せざるをえない。大雪被害はないとしても、7万トン程度の増産では焼け石に水だ。増産計画にどれほどの効果があるのか、限りなく不透明だ。 食用油の国際価格の高騰に近い将来歯止めがかかるなどと期待しない方がよいだろう。