中国南部大雨 農業生産に重大な損害の恐れ 世界食糧増産見通しに暗雲

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.10

  この2週間、大雨が中国南部に取り付いている。6月7日から8日にかけては、50年来、ところによっては2日で400ミリという大雨が広東省を襲った。

 食糧需給が逼迫、食料品価格が世界中で高騰するなか、中国農業部は、もし厳しい天候条件さえなければ、国の夏穀物生産は5年続きで増加、記録的高さに達すると言ってきた。しかし、この大雨で、この前提条件が早くも崩れてしまった。

 中国気象庁の最新予報では、昨年同期に比べて30%から70%も多い大雨が、今後10日間、南部の大部分の地域に押し寄せる。この悪天候は、その長さと規模から考えて、農業生産に重大な危険をもたらすと予想される。

 農業部は8日、大雨で収穫が妨げられるからと、収穫を急ぐようにと命じた。地方当局は、大雨に最高度の注意を払い、悪天候の影響から農業生産を守るように要請された。小麦と米に最大の注意を向け、成熟した野菜や果実の収穫はできるかぎり早く終えよ、河川と水路の泥さらいと排水を急ぐ一方、農業機器は安全チェックを終えよと言う。

 China strives for swift summer grain reaping amid persisting heavy rain in S China ,xinhua,6.9
 http://news.xinhuanet.com/english/2008-06/09/content_8328211.htm

 国連食糧農業機関(FAO)の最新”フード・アウトルック”は、2008年の世界穀物生産は、高価格に誘導された作付面積の増加や好天による小麦の増産などを主因に、21億9200万トンの記録的レベルに達するが、それでも価格は高止まりすると予測している。

 Food Outlook-May 2008
  http://www.fao.org/docrep/010/ai466e/ai466e00.htm

  この増産予測も崩れそうだ。中国だけではない。米国中西部も大雨、悪天候で畑は水浸し、一旦芽を出したトウモロコシも破壊され、撒き直しを余儀なくされるところさえある。不作は早くも決定的の観測が流れ、シカゴ・トウモロコシ相場は記録を更新し続けている(シカゴ商品取引所穀物等先物相場(期近):最新90取引日)。今年こそはと期待されたオーストラリアの小麦も、干ばつ減収の観測が強まっている。

 タイの米作農民は肥料とディーゼル燃料(灌漑水汲み上げ用など)の高騰や地主の法外な小作料要求で、もし米価が下がったときには破滅と、二期作の作付けを前に立ちすくむ。フィリピンの米作農民も、ディーゼル、肥料、米種子、農薬の価格高騰で、何時間も並んで政府補助米を買うほがマシと、今年の米作りを諦める。

 米国流理論家は、高価格は長くは続かない、高価格が農民の生産を刺激、需要は満たされ、価格は下がるからだと言う。自然(というよりも気候変動と言うべきか?)が、また社会が、こんな理論を今試そうとしている。