マレーシア 輸入肥料高騰が外貨準備とパームオイル企業の利益を脅かす

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.14

 マレーシアのプランテーション産業・商品大臣によると、マレーシアの今年の肥料輸入のための支払いは、価格高騰のために例年の倍の50億リンギ(15億ドル)になりそうだ。それはマレーシアの外貨準備を大きく減らす。また、肥料価格高騰は、パーム(椰子)粗油(CPO)価格急落(CPO(パームオイル粗油)先物相場(マレーシア:BMD:期近)の推移)と相俟って、プランテーション企業の利益を脅かす恐れがあるという。

 マレーシアは世界第二のパームオイル生産国で、例年は26億リンギ相当の化学・鉱物肥料を輸入する。世界最大のパームオイル生産者であるSime Darbyは、肥料に14億リンギを支出する。肥料費は、トン当たり1200−1300リンギの椰子の実の総生産費の50−60%を占める。椰子は1年中肥料が必要で、通常は窒素・燐・カリを混ぜた肥料を与え続けねばならない。

 大臣は生産者に対し、空になった椰子の実やパームオイル製油工場からの廃棄物などの有機物をもっと使い、輸入肥料への依存を3年から5年で30%減らすように求めるという。

 Malaysia�s fertiliser import bill to double: Minister,Business Times,8.14
 http://www.btimes.com.my/Current_News/BTIMES/Thursday/Latest/20080814151831/Article/index_html 


 プランテーション企業や企業的大規模農業はまだいい方だ。とりわけ途上国の小農民は、世界市場における食料作物価格の高騰の利益に与れない。世界市場向けに売ることができたとしても、燃料や肥料のコストは作物価格以上に高騰している。大部分は肥料を手に入れることもできない。

 食料価格高騰が途上国小農民を貧困から救い出し、一層の食料増産をもたらすなどという楽観論は、下の図を見れば吹き飛ぶだろう。このような原油や肥料の価格上昇は、食料価格の上昇と同様、多くは一時的というよりも構造的な要因によるものだ。


(原油価格は米国エネルギー省、肥料価格はYara:http://www.yara.com/en/investor_relations/analyst_information/fertilizer_prices/index.htmlによる)

(原油価格は米国エネルギー省、穀物等価格はFAO:http://www.fao.org/es/esc/prices/PricesServlet.jsp?lang=enによる)