中国 冬小麦の4割以上に干ばつ影響 食料生産に水問題の暗い影

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.5

  中国北東部の冬小麦生産が深刻な干ばつに脅かされている。中国農業部が2月3日、河南、安徽、山東、山西、甘粛、西の主要穀物生産6省で1億4100万ムー(930万f)の小麦が影響を受けていると発表した。昨年同期に干ばつの影響を受けていた小麦は900万ムーだけだった。今年はその10倍以上、冬小麦の43%が影響を受けており、中国の小麦生産に暗い影を投げかけるという。

 Drought threatens China wheat production,xinhua.net,2.4
 http://news.xinhuanet.com/english/2009-02/04/content_10759053.htm

  Also Severe drought continues in N China,China Daily,2.4

  長引く干ばつの主要な理由は、昨年10月以来、雨がほとんど降らないことだ。2日に発表された予報では、今後10日間も雨が降りそうになく、厳しい干ばつがなお続く。農業部は、そうなれば、小麦がますます枯れてしまうと警告した。

 農業部は、水路を開き、灌漑と施肥を強化するために、あらゆるレベルの農業部局が全戦力を投入するように要請した。農家を干ばつから救出するために、干ばつに襲われた省に12の専門家チームを送った。

 安徽省では174万fの作物が干ばつ被害を受け、16億元(2億3400万ドル)の経済的損害をもたらしている。干ばつでおよそ1287万人の命が脅かされている。省政府は干ばつ救済に1000万元を配分した。また、灌漑設備を購入する農民に対する1500万元の補助金も用意した。年間3億元の農業資材補助金も、今年は早めに支払う。その上、天候が許すならば、人工降雨の実施も計画しているという。 


 中国の食料安全保障は農地にもだが、それ以上に水にかかっている。工業化・都市化で農業から取り上げられる水は、結局は海外から取りもどすほかないだろう。地下水の枯渇への恐れから小麦生産を諦め、海外に農地を漁りはじめたサウジアラビアと同然だ。中国の海外農地取得は、何よりも水の確保を狙ったものと言えそうだ。ただ、それは、世界的な水問題、従って食糧問題を解決することにはならない。

 水利用を効率化し、生産に大量の水を要する食肉の消費を減らすなどにより、水消費そのものを減らすしかない(国連環境計画地球水アセスメント 水効率の悪い灌漑農業を止め、肉消費も減らせ,06.3.24)。

 関連情報
 中国 国土の40%近くが水と土壌を喪失,09.1.26