農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域2014年12月20日

JA全農 配合飼料価格を値上げ 畜産農家は「我慢の限界」 アべノミクスが飼料価格高騰の元凶

  JA全農(全国農業協同組合連合会)が19日、来年1〜3月期の配合飼料供給価格を今年10〜12月期に対して全国全畜種総平均トンあたり約2550円値上げすると発表した。主な原料である輸入トウモロコシと大豆かす(ミール)の国際価格(米国輸出価格の最近の多少の値上がりと高止まり、円安の最近の急進と円安傾向の持続が見込まれるためという。

 平成27年1〜3月期の配合飼料供給価格について JA全農 14.12.19

 このニュースについて、日本農業新聞は「アベノミクスに伴う円安の影響で配合飼料供給価格が値上がることを受け、全国の畜産農家からは経営の先行きを危ぶむ声が相次いだ。このままでは飼料穀物価格の値上がりは必至で、畜産経営に与える影響は甚大だ」と「各地の声」を伝える。

 円安で配合飼料値上げ 畜産農家「我慢は限界」 日本農業新聞 14.12.20

 「我慢の限度を超えている」という叫びも無理もない。この3年、例えば乳牛飼育用配合飼料農家購入価格(農水省調べ)は、2012年秋以降のトウモロコシ国際価格の下落傾向にもかかわらず、ほとんど上がりっぱなしだ。2013年半ばからの国際価格の下落は、やや遅れて配合飼料農家購入価格に多少反映された。それもつかの間、今年4月には国際価格の僅かばかりの上昇と消費税増税、円安の進行を反映して急騰する。国際価格は5、6月頃から下落に転じたが、それが購入価格に僅かに反映されるのは10月になってからである。その矢先、今度は国際価格の少々の上昇と円安の急進で、購入価格は間違いなく急騰することになるだろう(下図)。主犯は間違いなくアベノミクスだ。酪農家がバタバタ倒れるのもそのせいだ。

 穀物飼育大規模畜産はもともと持続不能、気にかけることはないと突き放すこともできるかもしれない。しかし、バターの品不足は輸入の要請を強めるだろう。国内生産が難しければ輸入すればいいいじゃんか、アベノミクス結構との声も聞こえてきそうだ。それだけで済むだろうか。畜産農家の減少はTPP反対勢力の弱体化にもつながる。あるいは、それがアベノミクスの狙いかもしれない(「畜産ですか?駄目ですね」 首相には分かっている? TPPの結論 農業情報研究所 14.5.5)。となれば、穀物飼育大規模畜産はどうせ持続不能と突き放してばかりもいられない。ことは持続可能な畜産、米、日本の農業・農村全体、さらには日本社会全体にもかかわる。

 生産者だけではない。バターがないないと探し回る消費者も、もう我慢の限界と声を上げるべきときである。