農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域)>ニュース 2018年12月2日

 

オーストラリア米生産 水不足と水価格値上がりで風前の灯  日本への輸出余力は? 

 

 持病で口・喉の筋肉の衰え著しく、美味しいものもなかなか喉を通らない今日このごろ、神戸フロインドリーブから取り寄せたチーズケーキをこの上なく美味しくいただいている。

 

 ただ、ここでするのは「新鮮な空気」のなかで作られるオーストラリア米の加工・販売を一手に引き受け、この米を美味しい、美味しいと食べる世界50ヵ国以上のファンタジックな市場に輸出するSunRiceの話です。

 

 そのサン・ライス社がニュー・サウス・ウェールズ州南部の精米工場の100人近くの労働者を解雇するという。今年は生産者から集めた米は60万トン、ミレミアム干ばつ2003年の40万トン以来、史上2番目に少ない。米作りが頼るマレー川地域の水配分が、干ばつでほとんど得られなくなったためだ。水不足と水の値上がりで来年はもっとひどいことになるだろう。現在の労働者が加工する米は集まらないというわけだ。

 

 一生産者は言う。いつもは600ヘクタールに米を作るが、今年は100ヘクタールしかできなかった。それでも幸運な方だ。ゼロ配分とメガリットル44ドルの水価格は本当に厳しい。

 

 オーストラリア米生産者協会(RGA)のモートン会長は、以前は貯水池に行き、水を買うことができたが、今は貯水池が小さくなっている。水需給、小さな貯水、高価格、もう米作りは商売として成り立たない。米作りどころか、酪農だって消えてなくなるだろうと言う。

 

 ところで、TPP11が発効すると、発効1年目には2000トン、2年目と3年目は6000トン、4年目には6240トンのオーストラリアに割当たられた輸入枠の米が日本に入ってくる。この輸入枠はその後段階的に増えることになっている(TPP11発効まで1カ月 輸入枠見直さず セーフガード発動しない可能性 日本農業新聞 18.12.1)。だが、オーストラリアには、そんな米を輸出する余力はなさそうだ。

 

 しかし、安心するのは未だ早い。アメリカにTPP並みの譲許をすれば、アメリカ米に5万→7万トンの輸入枠が与えられる(日米農産品市場アクセス交渉 牛肉だけではない 米農業を揺さぶる恐れ,18.9.28)。「日米物品貿易協定」交渉でTPP以上の譲許を迫られれば、お安い御用、オーストラリア分の枠をそっくり追加しましょう。日米同盟強化といい政治理念実現のためなら米製武器を際限なく買い(F35戦闘機 最大100機追加取得へ 1兆円、政府検討 日本経済新聞 18.11.27)、沖縄も平然と売り渡す安倍首相のことだ。日本の小規模米農家を押し潰すなど、朝飯前だ。