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フランス:農民、大規模小売店の商慣行に抗議、仕入れセンター封鎖

農業情報研究所(WAPIC)

02.11.22

 11月20日、フランスの中心的農民組合である全国農業経営者連盟(FNSEA)と青年農業者センター(CNJA)の呼びかけに応じ、1万を超える農民が全国に散らばる大規模小売店の生鮮品仕入れセンターの封鎖を開始した。封鎖運動は、ノルマンジー、ブルターニュ、ペイ・ドゥ・ロワール、ブルゴーニュ、ローヌ・アルプ、南西部を中心に、フランスの半数以上の県に広がっている(21日18時30分現在の封鎖地図)。

 FNSEA会長によれば、購入者(大規模小売店)と供給者(農業生産者を含む納入者)の間の商慣行を変え、また政府に法律の適用を求めるものだという。農民は、大規模小売店の市場支配力を「濫用」する商慣行、店舗における様々なサービスの費用を生産者に転嫁する慣行('Marges arriere'と呼ばれる)、恣意的な貯蔵、法外なマージン、生産者に支払われる価格にはねかえるという様々な手数料などを、大規模店の「恐喝」と非難している。野菜・果実、牛肉、豚肉、鶏肉・・・、農民に支払われる価格があらゆる部門で低迷を続けるなか、一人大規模小売店のみが太っている。このような事態への農民の不満が爆発したものである。

 FNSEAは、このような危機のたびに、2001年5月に制定された新経済規制法(NRE)の適用による大規模店への制裁を要求してきた。CNJAは、部門毎の「最低価格」設定や(NREは、野菜・果実部門につき、3ヵ月の期限付きでのこのような協定の締結の可能性を認めた)、また生産者価格の小売店販売価格に応じたスライドに取り組んできた。このような問題への公権力の介入を要請してきたFNSEAの会長は、現政府も、前政府と同様に臆病で、もはや実力行動しか事態を変える方法はなくなったという。

 対応を迫られた政府は、農相と商務か閣外相の名で、流通業に対する競争・消費・不正行為抑制総局(DGCCRF)の統制を即刻強化すると告げた。統制は農民が非難する「慣行全体」にかかわるという。また、NREの野菜・果実に関する規定生鮮品全体に拡張すること、供給者と流通業者の議論に完全に参加できるように、商慣行委員会内部に農民の議席を設けることも決定した。FNSEAは、一応の満足を表明しながら、流通業の対応を待つと封鎖行動を解いていない。

 いかし、このような「危機」が大規模小売店の恣意的慣行の是正により回避できるのか、その真因は何かについては、当前ながら議論がある。中心的大規模小売チェーンの大部分を糾合する「商業・流通連盟(FCD)」は、問題の原因はEUの共通農業政策(CAP)の変化、技術的・法的拘束の増加にあるとし、流通業には直接の責任はないと反芻している。最低価格制やマージンの規制は、EU法に反して、市場規制と管理経済に戻ることを意味する。実際、この夏の魚とネクタリンの価格を規制する協定は違法とされた。欧州委員会も、この種の協定に目を光らせている。

 FNSEAに対抗する農民組合・「農民同盟」は、かねて、この種の危機には、最低価格制適用と適用分野の拡張が重要としながらも、生産者への緊急援助、EUレベルでの適切な生産制御を要求してきた。実際、牛乳部門では、加工業者・流通業者との協定により、地域毎の価格設定が可能になり、遵守されているが、それを可能にしているのが、1984年にEUレベルで導入された牛乳生産割当である。度々相場の崩壊に見舞われる豚肉・鶏肉部門では、生産制御は「タブー」とさえなってきた。21日、農相は、家禽部門の過剰生産への対応ために、600万ユーロを投じて、フランスの生産の2%に相当する40万uの養鶏場の自主的閉鎖を促す計画を発表した。しかし、飼養密度等の生産条件に関する規則はないから、単位面積当りの生産能力は増加するであろうし、新たな養鶏場の建設を抑える政策もない。その上、「自主的」閉鎖計画であるから、過剰生産抑制の実効があがるかどうか、大いに疑問である。

(追記、02.11.23)22日、FNSEAとFCDの協定が成立、封鎖は解かれることになった。当面の特別の具体的措置が取り決められたわけではないが、今後、生鮮品についても、一定の時期に、一定の生産物のどれほどの量を、いかなる価格で大規模店に引き渡さねばならないかを生産者が知り得るように、両者の間で、前もって、価格、量、品質について定めることになるという。これにより、生産者は、大部分の生産物について、危機あるいは相場急落の際に、自動的に最低保証価格を受け取る権利を与えられることになる。ただし、これは、ともかくも当面の「社会的危機」を回避しようとする政府の意向が働いた結果の妥協である。競争法上の問題は残っているし、長期的に見て真の解決策となり得るかどうか、大いに疑問が残る(Le blocus paysan a fait plier les hypers,Libelasion,11.23)。

 参照情報

フランス農業・食料・漁業・農村問題省・Communiques press
Grande distribution : Hervé Gaymard et Renaud Dutreil rencontrent la FNSEA et Jeunes agriculteurs,11.21
Hervé Gaymard engage un plan d'adaptation de la filière volailles de chair,11.21
FNSEA
Extraits de réactions et encouragements de consommateurs et d'agriculteurs sur l'action GMS,11.21
Plates-formes alimentaires bloquées, 10 de plus,11.21
Halte au racket : les paysans bloquent la grande distribution,11.20
農民同盟
Crise porcine : la Confédération paysanne appelle à manifester,10.30
Fruits et légumes : immobilisme du ministère face à la crise ,7.29
Gros transformateurs et grande distribution préfèrent la viande bovine industrielle,7.26
Accord sur la pêche et nectarine : un effet d'annonce loin de résoudre une crise profonde,7.23
マスコミ・通信社情報
Les agriculteurs en colère contre les hypers,Libelasion,11.21
Les agriculteurs rencontrent vendredi matin les distributeurs,AFP,11.21
Nouveaux contacts entre FNSEA et FCD en vue d'un dialogue,Reuters,11.21
Le gouvernement accède aux demandes des agriculteurs,AFP,11.21
Les agriculteurs défendent leur droit à une vie décente,AP,11.21
Les agriculteurs ouverts au dialogue avec les grandes surfaces,Reuters,11.21
La FNSEA obtient des engagements du gouvernement contre les pratiques "abusives" de la grande distribution,AP,11.21
Les agriculteurs bloquent l'approvisionnement de la grande distribution,AFP,11.21
Dégradation du climat social à la veille de l'ultimatum lancé par les routiers,Le MondeInteractif,11.21
La Fédération du commerce (FCD) dénonce une "prise d'otage",Le MondeInteractif,11.21
Le mécontentement des agriculteurs et des routiers s'amplifie,Le MondeInteractif,11.21
"Les agriculteurs montrent leur ras-le-bol" en bloquant la grande distribution, explique Jean-Michel Lemetayer,AP,11.21
Des agriculteurs manifestent contre la grande distribution,Reuters,11.20