農業情報研究所

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フランス:近郊農業の保存をー環境研究所

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.15

 4月8日、フランス環境研究所(IFEN)が発表した環境データNo.81がフランス都市圏に位置する農業の変化を照らし出している。アルザスでスプロール(虫食い)状態は若干改善され、パリを中心とするイル・ド・フランス地方(州)でもそれほど悪化はしていないが、イタリアと国境を接する南仏・地中海沿岸地域や北部のオート・ノルマンジーではスプロールが急速に進み、都市による虫食いの率が低いサントル地方(イル・ド・フランスの南に接する)でも同様という(⇒1992-1999年における「虫食い指数」の変化)。これについて、IFENは、生活の質を保証する都市農業にもっと注目することで整備計画はより良いものになるというコミュニケを出した(L’agriculture urbaine : un gage de qualité de vie qui mériterait plus d’attention ?)。

 それによれば、フランス人口の60%以上が国土の8%を占めるにすぎない都市区域(建物が連続し、5千以上の雇用をもつ区域)に集中している。そして、これら都市区域の影響圏が顕著に増えており、いわゆる都市周辺市町村の面積は、1990年から1999年の間に50%増加した。それにもかかわらず、その人口密度は、都市区域の812/ku、農村区域の33/kuに対して66/kuで、そう高くはないという。

 コミュニケは、このような大都市周辺の居住拡大は、都市で働き、田舎で暮らすというフランス人のより良い生活環境への希求を示すものだが、環境に関して様々な不都合を生むと言う。車への依存度が高い都市周辺住民は、中心都市住民に比べて2倍から3倍の二酸化炭素を排出している。また、それは人口密度の低い居住地区での公共施設の費用を高め、社会的絆を断片化する恐れもある。さらに、大きな農業上の価値をもつ土壌の水浸透性を弱め、洪水のリスクも増すことになる。

 他方、農村から都市に向けての逆向きの動きには数々のメリットがあると言う。農業が生産機能を超える重要な役割を演じているのは、とりわけこれらの都市化さらた区域においてでである。大都市に近い農地は都市の散乱を制限し、自然災害のリスクに曝される空間を埋めたり、維持することを可能にする。これら地域には、雇用を創出する野菜・園芸小経営が集中している。平均して、養牛経営は1.5年労働単位(UTA)、大規模耕種経営は1.3年UTAをもつにすぎないが、園芸経営は4UTAを雇用する。

 しかし、ほとんど補助がないこれら小経営が都市分散に関係した地価上昇で後退している。こうした経営が少ないオート・ノルマンジーを除き、都市地域内の野菜・園芸経営が占める面積は、フランスのすべての地域(州)で、1990年から1999年の間に30%以上減少した。その跡は、時に、建築用地としての販売を期待して、大規模耕種経営が一時的に埋めている。

 コミュニケは、経済面で付加価値をもたらしながら住民の生活の質の改善に資するこのような農業の消滅を回避するプロジェクトの必要性を訴えている。