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フランス:農民同盟、少数派組合排除に抗議ー政府の組合援助配分改変

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.19

 シラク政権の誕生以来、フランス農政に様々な変質が生じていることについては何度か述べてきた。変化の方向は、基本的には大規模な企業的経営(あるいはそれを目指す経営)を利するもので、小規模農民経営に敵対するものである。この方向をさらにはっきりしてきた。少数派農民組合への財政援助を減らし、1981年のミッテラン政権誕生以来続いてきた「組合複数主義」を排除の動きが強まっている。それは、この20年来続いてきた農業政策決定過程への参加から少数派組合を排除することを意味する。

 農民同盟は、4月15ー16日に大会を開いたが、そこで「単一組合再建の企て」を非難、農民組合に与えられる公的予算の配分の変更に全会一致で抗議した。

 現在、年に1,100万ユーロの組合助成金は、その75%が農業会議所選挙の得票率に応じて、25%がこの選挙での議席獲得数に応じて配分される。2001年の農業会議所選挙で、農民同盟は27.05%(FNSEAは52.43%)の得票を得たが、獲得議席数では数議席を得たにすぎない。当時の農相・ジャン・グラバニlィーは、得票に応じての配分の割合を増やした。

 政府が準備中の政令(デクレ)では、議席数の応じての配分される割合を50%にするという。自動的にFNSEAを利することになる。ジョゼ・ボベは、この修正により、農民同盟への2003年の配分は、現在の280万ユーロから50万ユーロ(約6,000万円)減ることになると推算している。FNSEAへの配分は100万ユーロ増える。農民同盟は、ここに「単一組合との共同管理への回帰」を見る。ボベは、組合がコンセイユ・デタ[行政系統の最高裁判所]に訴えると発表した。

 戦後のフランス農民運動は、その団結と統一を誇示するために、全国農業経営者連盟(FNSEA)に拠る単一組合主義を護持、その分断は「タブー」であった。しかし、農業近代化により危機的状況に陥った小規模家族農民は、1960年代末ころから、この近代化を主導する「生産性至上主義」に抗議の声をあげはじめた。彼らは、70年代初めには、FNSEAの主導権を握るに近いところまで前進した。この「農業界」の危機を救ったのが当時の農相・シラクであった。彼は、農業政策決定過程におけるFNSEAの参加(政府との協議)を認めることで農民の懐柔に成功した。以後、フランス農業政策は、政府とFNSEAにより「共同管理」されるようになった。

 この過程から排除されたブルターニュの家禽農民・ベルナール・ランベールを指導者とする少数派農民は、自らをインテグレーションの下の「農民-労働者」と規定、労働者と連携して、激しい乳価闘争や土地闘争(典型的なのは、現在、ジョゼ・ボベ等が経営をもつラルザック高原軍事基地拡張反対闘争)を展開するようになる。それが今日の農民同盟(CP)の起原である。ミッテラン政権が誕生すると、彼らは「複数組合主義」の原理により、農業政策を方向づける協議への参加が可能になった。今、それが覆されようとしているのである。

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