欧州議会決議、養蜂と花粉媒介昆虫を救え、殺虫剤使用予防措置を

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.11

 EUの欧州議会は9日、養蜂が直面する困難を懸念、蜂の健康とヨーロッパの蜂蜜の品質を長期的に改善することを目指す決議案を採択した。

 Résolution du Parlement européen sur les difficultés rencontrées par l'apiculture européenne

 http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+TA+P5-TA-2003-0430+0+DOC+XML+V0//FR

 この10年ほど、フランスでは蜜蜂の死亡率が急増、養蜂産業の存続が危ぶまれるばかりか、人間の健康に悪影響はないのか、農業生産が拠って立つ花粉媒介昆虫が失われるのではないかといった懸念も広がっている。昨年9月の報道によれば、フランスでは毎年30万から40万の蜂が死ぬ。冬季の死亡率は10年間で10%から60%に不断に上昇した。蜂蜜生産は、1995年の32万トンから、2001年には4万トンにまで落ち込んだ。ひまわりの蜂蜜だけで、一匹当りの生産は、1995年から97年の間に75sから30sに落ちた。原因はわからない。

 蜂に重大な免疫不全を起こすバイエル社の殺虫剤・ゴフォ(アドマイヤーなどの商品名もある)が疑われている。この薬剤によるひまわり(種子)の処理は19991月以来禁止されたが、その後も蜂集団の衰弱は続き、蜂がトウモロコシの花を通してこの薬剤分子に曝されていることを確認する研究も現われた。別の研究は、この殺虫剤の蜂への「生物学的悪影響」を結論し、さらにその主要活性成分が多くの作物に発見されて、人間のリスクも否定できないとした。ただし、蜂集団衰弱にはゴフォだけではなく、他の要因も働いているという見方が支配的であり、養蜂業者や農民同盟などのこの殺虫剤禁止要求は通っていない。他の要因と言われるものも、今までのところ、何も解明されていない。今年4月に起きたミディ・ピレネー地方の蜜蜂の大量死は、高濃度の殺虫剤・フィプロニールへの暴露によるものとわかったが(フランス:蜜蜂大量死の原因はフィプロニルによる種子被覆処理と判明,03.9.20)、これは蜜蜂集団の長期的衰弱傾向を説明するものではない。

 欧州議会の決議の背景にはこのような実態がある。決議案は、新世代の神経毒性残留化学物質の利用に関する予防的措置の必要性を認め、欧州委員会に対して、

 ・蜜蜂の病気、農業慣行、農薬、気候条件などの基本的要因を確認するための多面的要因の分析の実施、

 ・蜜蜂の健康を長期的に強化するための訓練計画による良好な農業慣行の助成、

 ・国際的に認められた養蜂専門家の委員会の設置、

 ・蜜蜂の健康に関する多面的要因分析のための研究に関するヨーロッパのレベルでの協力体制の設置

を要請するとともに、

 農業地域における蜜蜂その他の花粉媒介昆虫の地位向上のための措置の開発を提案、蜜蜂を大量に失った養蜂業者の損害補償と再建援助のための方策を早急に講じるべきことを主張している。

 それは、昆虫破壊が引き起こす生物多様性の喪失を懸念している。

 なお、フランスの非主流農業者組合の一つで、自由主義を標榜する「農村共闘(CR、Coordination rurale)」は、9日、フィプロニールとゴフォの使用に関する措置によって責任を取ることを農相に要求した。

 Source:Le Parlement européen se préoccupe des difficultés rencontrées par l'apiculture,Agrisalon,10.9