フランス:乳価協定廃棄、農民同盟はEUレベルの牛乳市場管理論議を要求

農業情報研究所(WAPIC)

04.1.20

 フランスの乳業団体が6年間にわたり乳価を統制してきた協定の廃棄を通告した。乳価下落への牛乳生産者の不安が高まっている。今年1月1日から放棄された価格規制制度の空白を埋めるための生産者・乳業・協同組合代表者による一週間にわたる交渉が行われたが、和解の困難が確認されただけであった。16日にはフランス西部で生産者の集会が開かれたが、22日に予定された交渉も問題解決には至らないだろう。

 97年11月に調印された協定の下では、生産者が乳業企業に販売する牛乳の価格は、景気動向に応じて改訂することが可能であった。この価格は、生産者が必要とする肥料と種子の費用に応じて変動するが、スーパーなど大規模小売店での乳製品(ヨーグルト、チーズ・・・)の販売価格も考慮に入れるというものであった。豚肉・鶏肉・牛肉は繰り返し相場崩壊の危機に遭遇しているが、乳価だけは、この制度の下、この6年間、比較的安定的に推移してきた。だが、2002年以来、市況は悪化、他のEU諸国を上回る乳価を人工的に作り出すこの制度の維持はますます難しくなってきた。

 この動きに拍車をかけたのが、昨年6月に合意された共通農業政策(CAP)の改革である。それは、生産者から買い入れる余剰バター・粉乳の価格(介入価格または保証価格)をそれぞれ4年間で25%、3年間で15%引き下げるというものである。生産割当は07、08年に1%ずつ拡大する。所得減少は、新たに導入されるデカップリングされた単一農場支払いで埋め合わせる。同時に、市場が飽和した場合の買入れ量の上限も、2003年には12万トンであったものが、04年には7万トン、07年には3万トンにまで減らされる。協定は再交渉されても、最低乳価はEU価格のレベルに限りなく近づくであろう。

 規制緩和・自由化と生産者価格の歯止めのない低落の波は、遂にフランスの牛乳をも飲み込んだと言えそうである。農民同盟のブルターニュのスポークスマンは、「協定なしでは、価格制御なしのウルトラ・リベラリズムと価格低下の論理」が支配することになるという。これが競争力強化・市場指向型農業を目指す「デカップリング」直接支払い農政の帰結である。

 農民同盟は、生産者は割当による生産制御を防衛、継続する価格引き下げは望まない、農民の労働に酬いる価格を獲得するためにはヨーロッパ・レベルで牛乳生産を減らすことが必要だとして、牛乳市場管理に関するEUレベルでの論議を要請するコミュニケを発表した。それは、次の6点を要求する。

 1.ヨーロッパの牛乳生産はヨーロッパの消費者と販売可能な市場に応じて方向付けられねばならない。それが意味するところは、生産者乳価の引き下げではなく、需給の均衡である。

 2.そのためには生産の減少が不可避である。この生産削減の方式に関する論議はヨーロッパ・レベルで行われねばならない。

 3.乳価は費用をカバーするレベルでなければならない。

 4.そのためには機能的関税保護は避けられない。

 5.1と2が実施された後、輸出補助金は劇的に削減できるか、廃止できる。食糧主権の原理は、それぞれが自身の人口を養えるより良いチャンスをもつために、ヨーロッパにも途上国にも適用されねばならない。

 6.EUはWTO交渉でこのような道を選択せねばならない。考慮されねばならないのは、国際貿易の利益でも、多国籍企業の利益でもなく、生産者、環境、農村世界、消費者の利益であり、また動物保護である。

 このようなモデルは、農業者の所得改善を可能にし、持続可能な農業のより良い条件を決定し、第三世界の農業により良い発展のチャンスを与え、ヨーロッパの納税者の負担を減らすという。

農業情報研究所(WAPIC)

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