ボルドー産、ブルゴーニュ産地方ワイン?AOCが消える

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.24

 フランスワインが新大陸のワインに遂に降参、伝統と誇りを棄てて、味も素っ気もない「近代化」への方向を固めた。国内消費や輸出の減退で危機的状態にあるワイン産業建て直しのために、とりわけ簡明な表示を求める米英等の消費者をターゲットとする輸出販売を伸ばそうとする戦略だ。農水省が21日に提案したワイン産業危機脱出策に盛り込まれた(Hervé GAYMARD et Nicolas FORISSIER ont reçu la filière viticole pour tracer les perspectives d'une nouvelle dynamique de l'offre française)。

 提案された措置のなかでも最も劇的なのが、まさにフランスワインの尊厳の源である原産地交渉制度の改変だ。最高級品の代名詞であった統制原産地呼称(AOC)、ボルドーやブルゴーニュといった最も評判の高い産地は、これまでAOCワインしか生産できず、それしか生産しようともしなかった。だが、熱暑の昨年とはうって変わって大豊作が予想される今年も、第一四半期のフランスワインの輸出は、昨年同期に比べて価額で7%、量でも4.6%減っている。これが伝統も誇りもかなぐり捨てさせた。

 今後、AOCは真の高級ワインにのみ許される。国立原産地呼称研究所(INAO)が提案する改革では、現在の制度は、表示の簡明化を求める消費者にとって複雑すぎるとして、AOCの二つのレベルが創られる。AOCを名乗るワインは、基準書を一層制限的にされる。産地は狭く限定され、供給側主導販売の「顧客を選別する」最高級品のみとなる。

 強化されたAOC基準を守りたくないか、守れない呼称地域のブドウ栽培者には、一部または全部を地方ワインやテーブルワインに転換する可能性が与えられる。ボルドー産やブルゴーニュ産の地方ワイン、テーブルワインが現われるわけだ。これは需要側主導の販売を想定するもので、新大陸ワインのようにブドウ品種の表示を行う。AOCでは品種表示は許されない。ただ、「フランスの品種ワイン」の構想は、さすがに退けられ、地域(州)ごとの品種ワインが生産されることになった。フランスのメルロ品種ワインというだけではなく、ラングドック産であることくらいまでは分かるわけだ。それでも、産地への興趣は削がれる。

 これらワインは、新大陸ワインとの競争力を縮めるために、仕上げの規則を緩められる。表示される品種や産年の純度の限界も、100%から85%に緩める。

 これらの提案は関係団体に諮られ、2006年収穫からの実施を目指す。

 これは、明らかに「グローカリゼーション」というより、「グローバリゼーション」そのものだ。超高級ワインの顧客に選別されるはずもない我輩、やはり「グローバリゼーション」はご免こうむりたい。フランスワインも味気なくなるばかりだ。

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