フランス EU共通農業政策(CAP)防衛のメモランダム 13ヵ国が支持

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.21

 フランスのビュセロー農相が20日、ブリュッセルで開かれたEU農相理事会に、共通農業政策(CAP)の将来に関するメモランダムを提出した。

 英国のブレア首相は、かねて、英国のEU予算への寄与が受け取りに比べて少なすぎるとしてサッチャー時代に獲得した多額のEU予算からの払い戻しを確保する一方で、グローバルな競争の激化に対応してEU産業競争力を強化するために不可欠な研究開発・教育予算を確保するために、現在40%を占めるCAP支出の将来の削減を要求してきた。そして、25ヵ国に拡大後の2007年から2013年までの年々のCAPの市場支持支払と直接支払を実質で2006年レベルに維持するという2002年10月のブリュッセル首脳会議(欧州理事会)の合意(欧州理事会(EUサミット)、CAP予算枠で合意,02.10.29)の2008年見直しを目論んでいる。

 フランスは、CAPの弱体化につながるこのような構想に強く反発、この合意を覆すようないかなる改革も認めないという立場を貫いてきた。メモランダムは、このような立場を改めて確認するものだ。このメモランダムには、スペイン、イタリア、ギリシャ、アイルランド、リトアニア、ルクセンブルグ、ハンガリー、ポーランド、スロベニア、キプロス、ポルトガルに加え、将来の加盟候補国であるルーマニア、ブルガリアの13ヵ国も調印した。その上、20日には、フランスの立場は、EU予算への最大の寄与国であり、常にその縮小を追求してきたドイツ、さらにはベルギー、オーストリアの支持もとりつけたという。

 ドイツのホルスト・ゼーホーファー消費者保護・食料・農業相は、「農業大臣として、この文書[メモランダム]を大部分の点で支持することが重要と考える」と述べたという。英国、スウェーデン、デンマークが強く求めるCAP支出の削減、すなわち近い将来のCAPの抜本的改革はほとんどありそうもないことがはっきりしてきた。

 このメモランダムは、地球人口の増大が食料増産、水や土地などの資源をめぐる緊張、地球温暖化、バイオ燃料など非食料農産物需要増大などの問題を鋭く提起すると指摘、農業は、このような予想される世界の深い変化に応じた野心的将来像を持つに値すると強調する。

 かといって、食料を米国や南米の手に委ねるのは論外、CAPを解体、農業政策を再び加盟各国の手に戻すのも論外だ、これをEU政策の革新に据え続けねばならないし、輸入品に対して域内優先[すなわち国境保護]を刺激せねばならないと言う。この域内優先は、特に競争者がEU農業者並の社会・環境・衛生規準に従っていないのだから、不可欠だと主張する。

 CAPの費用に関しては、EUが15ヵ国から25ヵ国に拡大したのにCAPの実質支出増加は2013年まで凍結されているのだから、高くつきすぎるという英国の主張は当たらないと反論する[実際、25ヵ国への拡大にもかかわらず、実質支出は増えないのだから、フランスの受け取りも減るわけだ]。むしろ、ますます激化する世界的競争に曝されるヨーロッパの生産者への一層の支持が必要と言う。

 グローバリゼーションによる価格低下は農業所得を守る手段の一層の強化を要請する。EUレベルの援助に加え、EUの官僚的統制に服さない農民への国家援助も許されねばならないと言う[国家援助は加盟国間の競争条件を歪め、単一市場の原則に反するからと、現在は厳格に定められた条件でのみ許されている]。

 さらに、WTOのセーフガード条項や米国流の気象災害のリスクに対する保証制度が利用されねばならず、価格変動の影響を和らげる国家レベルの共済基金の設置も必要と付け加える。

 最後に、2013年の輸出補助金廃止をにらみ、米国の輸出援助に対抗してヨーロッパの利益を守るために、欧州委員会にこの手段を利用を要請する。

 WTO農業交渉が大詰めを迎えるなか、欧州委員会はますます身動きがとれなくなりそうだ。

 Paris obtient le soutien de Berlin pour défendre la PAC,Liberation,3.20
 http://www.liberation.fr/page.php?Article=368557
 La France remonte aux créneaux pour défendre la PAC,Liberation,3.19
 http://www.liberation.fr/page.php?Article=368334