欧州理事会(EUサミット)、CAP予算枠で合意

農業情報研究所(WAPIC)

02.10.29

 10月25日、ブリュッセル欧州理事会は、独仏の直前の合意(CAP財政で独仏が合意、遠のく改革,02.10.25)に沿い、EU拡大後の共通農業政策(CAP)予算に関する合意に達した(Council of the EU: Presidency Conclusions of the Brussels European Council (24-25 October 2002),10.26)。これによってEU拡大の最大の障害が取り除かれ、拡大交渉の最終局面に進み、12月のコペンハーゲン欧州理事会での交渉完結への道が敷かれた。

 合意によれば、新規加盟国の農業者に対する直接支払は加盟当初から導入され、そのレベルは、最初の年・2004年には現加盟国の農業者に対する直接支払の25%とされる。以後、このレベルは2007年まで年々5%ずつ引き上げられ、それ以後は毎年10%づつ引き上げられて2013年に100%に達する。

 拡大後25ヵ国における2007-2013年の市場関連支出と直接支払の年々の支出は、2006年についての数字(1999年ベルリン欧州理事会で合意された15ヵ国についての上限と新規加盟国についての既提案の上限)を実質タームで超えることはできないとされ、2006年の支出に対して年1%の増加の範囲に保たれる。

 結論は農村開発政策の予算枠については言及していないが、条件不利地域援助に特別に言及、現在の加盟国内の条件不利地域に住む生産者に対する援助が守られねばならないと述べている。また、農業の多面的機能はヨーロッパ全域で維持されねばならないとも言う。

 このような合意にもかかわらず、CAPの将来像ははっきりしない。特に欧州委員会が提案している中間見直し案(EU:欧州委員会、共通農業政策見直し案を発表,02.7.11)の行方はどうなるのか。

 この合意を受け、28日、フィシュラー農業担当委員は、見直し案が取り組んだ基本的問題と目的は不変にとどまり、すぐにも行動しなければならないと強調した。タイミングを失すれば、野心的な政策目標とCAPが消費者・市民・農民に与えるものとの間のギャップが広がり、遅かれ早かれ、CAPは持続不能になると言う。また、中間見直し案はWTO農業交渉の国際的文脈においてもCAPの持続可能性を保証するものであることや、直接支払は環境を損う行為を促進してはならないことも強調している(Dr. Franz FISCHLER Member of the European Commission, responsible for Agriculture, Rural Development and Fisheries Europe needs a Strong and Sustainable Agricultural Policy Agra Europe Mid-Term Review Conference Brussels, 28 October 2002,10.28)。新たな財政フレームワークにいかなる内容を盛り込むのか。予算の制約が課されなかった今後の農村開発政策をいかに組み立てるのか。これらが喫緊の解決を要する今後の問題となる。