CAP改革 アイルランド農業所得の94%がEU補助金 小規模農家撤退は不可避

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.19

  アイルランド農業食料開発庁(Teagasc)が、EU共通農業政策(CAP)のデカップリング改革実施初年度の2005年年次農業調査結果を発表、農業所得のほとんどすべてが単一農場支払やその他のEU援助で構成され、市場から得た所得は6%にすぎないという衝撃的事実を明らかにした。

 National Farm Survey 2005,2006.9

 2005年の平均農業所得は名目で前年よりも44%増加、22,500€となった。しかし、生産物販売で得た所得は1,360€にすぎず、2004年に比べて32%減少した。過去の実勢を基準として生産と無関係に支払われる単一農業支払やその他のEUからの援助が所得の94%を占める。2005年の所得増加はCAPのでデカップル改革の結果であり、2006年には所得は大きく減少する。

 大規模農家はさらに拡大を続けるだろう。しかし、農家は総生産高の60%を肥料や獣医料金に支払っている。小規模農家はコスト増加に耐えかねて生産を縮小、代替所得源を農外に求める以外に生き残る道はなくなる。このような農家は、単一農場支払を失うことなく、農業生産を縮小、農外の職を増やすことができる。

 平均所得が44%増えたこの年でさえ、平均的工業賃金の73%にとどまっている。多くの農家が農外に所得源を求める趨勢が続いてきた。2004年、すべての農民とその配偶者の52%が農外兼業に従事していたが、農業所得が大きく増加した2005年でさえ、この比率は55%に増えた。この趨勢は今後ますます加速するに違いない。

 平均所得が39,000€になる酪農部門の農家は比較的恵まれており、その4分の1は仕事を続けることになりそうだ。しかし、肉牛農家、羊農家、耕種農家の平均所得は、それぞれ12,700€、15,900€、29,900€で、農民の24%は、30,000€の平均工業賃金をはるかに下回る6,500€以下の所得しか持たない。これら農民の99%が農外の仕事、社会保障、年金などの他の所得源を持っている。ただ、環境に優しい農業で報償を受ける牛飼育農民は比較的高い所得を得ているという。

 関連情報
 欧州議会、公正な農家所得安定策―競争力と多面的機能を両立させるCAPを要請,04.2.10