フランス バイオ燃料目標達成のために70万haの食料用耕地が犠牲の計算

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.22

  フランス農水省の統計・研究局(Agreste)が21日、化石燃料に合体される植物由来バイオ燃料の比率を2010年までに7%にまで高めるフランス政府の目標を達成するためには、現在食料生産に使われている耕地のうちの少なくとも70万fを燃料用作物生産に転換する必要があるとする研究を発表した。

 1,8 million d’hectares nécessaires pour le colza énergétique d’ici 2010 - Primeur N° 185 (PDF : 684.1 ko),Agreste Primeur,185,06.11

 EUは2003年の指令で5.75%の目標を掲げ、休耕地を燃料用作物の生産に当てるなどすれば、この目標を達成するために農業の集約度を高めるなどの環境悪影響はなく、域内食料生産に重大な影響を与えることもないと推測しているが(欧州委員会 バイオマス行動計画を発表 社会・経済・環境悪影響の克服が課題,05.12.10)、このより低い目標でさえ、食料生産との競合は避けられそうにない。

 この研究によると、7%の目標を達成するためには、22万fでの小麦・トウモロコシ・テンサイの燃料用栽培が必要になる上に、ナタネの燃料用栽培だけでも180万fが必要になる。これは、燃料用ナタネ栽培面積が2006年に比べて110万f増加することを意味する。この面積は110万fの休耕地を含む170万fの耕地から調達せねばならない。ところが、これらの土地のすべてがナタネ栽培に適しているわけではなく、燃料用ナタネの栽培に年々動員できる休耕地は最大で43万fにとどまる。このために、現在食料生産に当てられている少なくとも70万fの燃料生産用への転換が必要になる

 研究は、農家は予想収益に応じて作物を選択するから、これは食料用作物と比べて燃料用作物に有利な経済条件がなければ不可能、食料用ナタネ、あるいは小麦を犠牲にして燃料用ナタネを奨励する措置が取られねばならないと言う。

 2003年の共通農業政策(CAP)改革で、補助金受け取りの条件となる義務的休耕の下にある土地での燃料作物の栽培は許された。2004年には1fあたり45€(約6800円)の燃料用作物援助も創設され、この援助は休耕地以外の燃料作物も受け取ることができる。このような援助の一層の増強が必要になるだろう。

 研究によると、食料生産と燃料生産の競合はフランスの食料品貿易収支にも影響を及ぼす可能性がある。燃料用ナタネの増加による食用油の供給の減少はヒマワリの増産につながる。それは南米からの大豆絞り滓の輸入減少を通じて植物蛋白質の貿易赤字を減少させる一方、食用のナタネや小麦の輸出は減少することになるという。

 干ばつとバイオ燃料用需要の増大は、米国だけでなく、世界中の食料供給に影響を与え始めている。トウモロコシ価格の10年来の高騰で、世界第二のトウモロコシ輸出国であるアルゼンチンは、国内の供給不足・インフレを恐れて輸出停止に踏み切った(Corn Rises as Argentina Halts Exports to Conserve Supplies,Bloomberg,11.20)。イギリスでは、干ばつとバイオエタノール用需要の増大による小麦価格の高騰がもたらした豚飼料コストの増加のために、養豚産業は飼料の見直しを含む根本的再編成を迫られている(Biofuels will send up pig feed costs,Western Daily Press,11.18)。米国の牛・牛肉市場も大混乱に陥っている(Drought, Corn Demand Create Volatility In Livestock Mkts,Cattle Network,11.20)。食料供給の未来は誰にも予測できないものになってきた。