欧州委員会 バイオマス行動計画を発表 社会・経済・環境悪影響の克服が課題

農業情報研究所(WAPIC)

05.12.10

 欧州委員会が7日、森林、農業、廃棄物からのエネルギー利用を増やすための”バイオマス行動計画”を発表した。

 Communication from the Commission;Biomass Action Plan,07/12/2005 

 欧州委員会を計画策定に駆り立てた理由の一つは、EUにおけるエネルギー供給安全保障への危機感である。EUのエネルギー供給は輸入石油・ガスへの依存を強めているが、石油価格は上昇を続け、大きく下がる気配はない。もう一つの理由は、温室効果ガス排出削減の国際約束である。そのために、更新可能なエネルギーの開発はEUエネルギー政策の最も重要な課題の一つになっている。現在、更新可能なエネルギーのシェアを2010年までに12%まで伸ばすという目標が設定されている。しかし、現状では、9%から10%にとどまると見込まれている。そこで、大きな潜在力をもつ更新可能なエネルギー源であるバイオマス・エネルギーを促進するための今回の行動計画となった。

 計画には20あまりの行動が含まれる。その大部分は2006年から実施される。これには、輸送、暖房、電力生産でバイオマスの利用を奨励するための燃料基準改善の検討、特に木材・廃棄物由来の液体燃料を製造する研究の強化、農業者や森林所有者に対してエネルギー作物に関する情報を伝えるキャンペーン、冷暖房での更新可能なエネルギー利用を促すための将来のEU立法(2006年)なども含まれる。さらに、欧州委員会は、2006年にバイオ燃料に関する現行指令(2003/3)に関する報告を提出、ここで加盟国の指令実施状況を点検するとともに、バイオ燃料シェアの国家目標設定や、輸送用通常燃料に最低比率のバイオ燃料を混合することを供給者に義務付けるなどの指令改正も考える。また、各国は国家行動計画を策定する(現在は、オランダ、ドイツ、イギリスが策定か策定作業中)。

 このようにして、EU市場で現在0.8%にすぎないバイオ燃料シェアを2010年までに5.75%(2003年にEU全体について設定した目標)にまで高める。欧州委員会は、計画により、農業の集約度を高めるなどの環境悪影響はなく、また域内食料生産に重大な影響を与えることもなく、2003年に石油換算で6900万トンのバイオマス利用を、2010年には1億5000万トンに増やすことができると推計する。また、温室効果ガス排出も、二酸化炭素換算で年に2億900万トン減り、25万から30万の直接雇用が創出される。化石燃料シェアは80%から75%に減り、輸入エネルギー依存度も48%から42%に減る。他方、このための直接コストは年に90億€ほどと見込まれる。これは、石油1リットル当たり1.5セント、電力1kWh 当たり0.1セントの増加に相当する。

 しかし、行動計画は、バイオマス・エネルギー利用増加がもたらす社会・経済面、環境面の悪影響への配慮も喚起している。

 社会・経済面の障害

 ・バイオマス・エネルギーは現在の化石燃料も高価なのが一般的である。そこで、エネルギー産出とバイオマス技術の効率性を最大限に高める一層の技術研究・開発が必要になる。

 ・バイオ燃料作物の生産のために一層の農地が必要になり、食料生産のために利用される土地の必要性と競合する。欧州委員会は、域内生産だけで問題なく2010年の目標は達成できると推定する。それは、域内の農村開発にも寄与する。しかし、バイオ燃料の全量域内生産は、特にその生産と輸出の拡大に期待膨らませている途上国の利益を損なうことになる。だが、輸入に道を開けば、例えばブラジルなどの低価格品に対抗することができず、全量輸入の結果になりかねない。そこで、欧州委員会は、WTO協定や様々な特恵協定を考慮し、バイオ燃料の域内生産と輸入の適切なバランスを追求している。

 環境面の障害

 ・大規模なバイオエネルギー生産が生物多様性、土壌、水の利用と供給に与える影響。以前の不耕作地(永年草地)が農地に変えられるときには、特に悪影響が考えられる。逆に、エネルギー作物の栽培が農業の収益性を改善、環境面で有益な農業の維持に貢献できる地域もある。既存の食料生産農地でエネルギー作物が栽培される場合には、影響はどのような作物(樹木も含む)がどのように栽培されるかで、また地域によっても異なる。廃棄物利用は、一般的には他の処理手段より環境に好影響があるが、例えば森林廃物は、土壌養分が少なく、侵食のリスクがある場合には、放置したほうがよいこともある。

 ・先進国のバイオ燃料推進が熱帯林や貴重な動植物生息地の破壊に拍車をかける恐れがある。途上国からのバイオ燃料ーパームオイルや大豆ー輸入は、これら諸国の経済的利害と環境影響を調和させる適切な輸入政策が必要になる。

 ・バイオマス燃料も化石燃料と同様に汚染物質を排出する。暖房、特に家庭暖房では状況は不利である。

 行動計画は手放しで礼賛できるものではない。これらの問題をいかに克服するか、なお重い課題を抱えている。

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