EU 果実・野菜部門市場組織改革で合意 デカップルCAP改革、最終コーナーへ

農業情報研究所(WAPIC)

07.6.13

  5月11日の閣僚理事会(EUの決定機関)で、EU27ヵ国農相が全会一致で果実・野菜部門の共通市場組織(CMO)の広範囲に及ぶ改革に合意した。

 2806th Agriculture and Fisheries Council meeting - Luxembourg, 11-12.06.2007 (provisional version - only items discussed on 11 June)

 EUはここ数年、WTOドーハ・ラウンド交渉におけるその立場の強化を最大の目標に、EU農業の競争力を強化し・市場志向を強めると同時に食品安全や環境保護を強化する共通農業政策(CAP)のいわゆる”デカップル”(援助の生産との切り離し)改革を推進してきた。果実・野菜部門はこのような改革から取り残された最後の部門であり、欧州委員会は今年1月、やはり同様な目的を持つこの部門の改革案を提案していた。

 欧州委は、改革の狙いを、競争力と市場志向を強め、市場の危機から来る所得の変動を減らし、消費を増やし、環境保護を強化し、可能なところではルールを簡素化し・行政負担を減らすこととした。

 このために、改革案が何よりも重視したのは、生産者の小売部門への対抗力を強める生産者組織(PO)の拡充・強化である。果実・野菜部門はこの10年、価格設定で中心的役割を演じる高度に集中した小売・ディスカウントチェーン、あるいは品質改善や低価格でシェアを伸ばしている輸入産品からの強力な圧力に直面してきた。その一方で、一部加盟国の生産者の多くの部分が、なおPOへの加入を躊躇っているという背景がある。

 改革の第二の重点は、他の部門同様、競争力と市場志向を強めることを目指すデカップリングである。現在のCMOの下では、加工産業への出荷量に基づく生産者助成、加工業者直接援助、いくつかの場合における土地面積を基準とするPOを通しての生産者援助が提供されてきた。これらの援助を、現在の生産とは無関係、過去の基準期間に農場(農家)が受け取った直接援助を基礎に計算される”単一支払”に切り替えようというのである。

 その他、POに対する環境対策への最低限の支出の義務化、有機生産や販売促進措置へのEU資金供給の増強、輸出補助金の廃止などを提案していた。

 Proposal for a Council regulation,07.1.24

 この提案は、閣僚理事会の討議のなかで多くの修正を受けたが、基本的な柱は変わっていない。

 POは強化され、これにかかわるルールが簡素化される。生産者のPO加入奨励措置が強化され、POに対して一層広範な危機管理手段が提供される。

 果実・野菜栽培地が単一支払の対象地に追加され、既存のすべての果実・野菜助成はデカップルされる(トマトと多年生作物については一定の移行期間)。

 他の単一支払計画対象部門と同様に、直接支払を受ける農業者は環境基準遵守を義務づけられるが、それだけでなく、POはそれぞれの事業計画に、温暖化ガス排出削減への取り組みとか、包装廃棄物削減とか、二つ以上の環境対策を含めるか、支出の10%を環境対策に振り向けねばならない。

 これら事業計画における有機生産のためにはEUが60%を補助する。

 POは、その事業計画に果実・野菜消費促進を含めることができる。教育施設の子供を対象とする消費促進に600万€、学校・病院・慈善団体への果実・野菜無料提供に800万€の予算が計上され、後者については、POが販売する量の5%までの無料提供はEUが100%補助する。そして、閣僚理事会は、欧州委員会に対し、学校果実・野菜計画創設の実行可能性をできるかぎり早く研究するように要求している。 

 関連参照情報
 EU共通農業政策(CAP)改革の内容,04.5.8